野球クロスロードBACK NUMBER
満身創痍のヤクルトをCSに導く――。
小川流“日替わりヒーロー”システム。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/09/05 12:20
プロ入り7年目の生え抜き遊撃手・川端慎吾。今季、得点圏打率.330(9月4日現在)と勝負強さを見せ、台所事情の苦しいチームを支えている。
独走態勢に入っている巨人は、2位・中日とのゲーム差を8.5に広げ、セ・リーグの大勢はほぼ決した状態となった(数字はすべて9月4日現在)。4位まで優勝のチャンスがあるパ・リーグと違い、シーズン終盤の見どころは少ないと周囲から囁かれ始めている。
上位2チームはそうかもしれない。だが、3位争いとなると話は別だ。
2位の中日に11ゲーム差離されている3位の広島と4位のヤクルト。両者は現在、クライマックスシリーズ(以下CS)進出を懸けて熾烈な順位争いを繰り広げている。
特にヤクルトは、8月下旬から広島にじわりじわりと詰め寄り、ゲーム差1と相手の背中を掴みかけている。残り試合が少なくなった9月にもなれば、追われるよりも追う立場のほうが有利。つまり、どちらかといえばヤクルトのほうに勢いがある、というわけだ。
それを予感させてくれたのが、8月31日からの中日との3連戦だった。
「うちは、神宮ではなんもいいことが起こらん。球場をお祓いしてもらわないといかんな……」
2勝1分けと勝ち越し、中日の高木守道監督をひどく落胆させたわけだが、ただ、ヤクルト側からすれば、神宮における対中日の戦績が7勝2敗2分けと圧倒的に勝ち越してはいるものの、相性だけでこの3連戦を総括されてしまっては腑に落ちないところもあるだろう。
主力が抜けた穴を埋める、小川監督の絶妙な選手起用。
ヤクルトにしても、チーム状況としては万全とは程遠い状態だったのだ。本塁打王のバレンティンと4番・畠山和洋の中軸ふたりに加え、機動力の起点となる上田剛史という主力3名が故障。本来、繋ぎ役である田中浩康や藤本敦士がクリーンナップを務めるなど、打線を固定できずに苦しんでいた。
そんな状況下にありながらもヤクルトが勝ち越せたのには、たしかな理由が存在する。
それは、小川淳司監督の選手起用だ。
畠山の離脱でファーストが不在となれば、出場機会を求めて今季から同ポジションに着くようになった藤本を起用。31日には、一軍では一度もファーストを守ったことのない川端慎吾をスタメンに抜擢した。川端に至っては、守備への負担を減らし、打撃に専念してほしい、という意味が込められていたのだろう。彼はこの日、9回に値千金の同点タイムリーを放つなど指揮官の期待に見事に応えた。
9月1日の試合では、前日から4番に座るミレッジが6打点と大爆発。8月末時点で打率3割以上、20本塁打近くという成績からの抜擢ではあるが、「ミレッジには『他の外国人選手には負けない』というプライドがある」と、小川監督は彼の意思をしっかり尊重した上で4番に据えたのだ。