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<女王・谷亮子の提言> 「勝つために日本柔道がすべきこと」
text by
赤坂英一Eiichi Akasaka
photograph byNanae Suzuki
posted2012/08/30 06:01
選手と監督の関係も見直すべき時では?
次に、日本の指導体制、選手と監督の関係のあり方も見直すべきかもしれません。
いい例が、78kg超級の決勝で杉本美香選手に勝ったキューバのオルティス選手。彼女はがむしゃらに突進していたわけではなくて、セコンドの監督の指示をよく聞いてました。あの監督は私も知っていて、昔から何人ものメダリストを育てている。選手が子供のころからつきっきりで、五輪にもセコンドとして参加するんですよ。国を挙げてそういう体制づくりをしている外国が増えました。
そういう国の選手は、試合中に監督に指示を出されると、聞き慣れた声だからすぐ理解できるわけです。監督と選手が試合の情報を共有しているので、瞬時の状況判断や素早く対応することも可能になった。だから勝った瞬間、喜びを爆発させる。抱き合って泣く。ロンドンではそういう場面が多かった。
ところが、日本の場合、選手は大学や企業などの所属先から選ばれて、監督は全柔連が派遣した人が務めています。所属先から選手をお借りして、試合が終わればお返しする、という形です。私もその体制でやってきたので、一概に悪いとは言えない。しかし、連盟と所属先の間にパートナーシップがあれば、もっと勝てる確率が上がると思うんです。
最も重要なのは、ジュリーを筆頭とした「JUDO」化への対応。
そして、最も重要な問題点としては、ロンドンで顕著になった柔道の国際化、いわゆる「JUDO」化にどう対応していくか。今回は男子66kg級で審判の判定を覆し、海老沼匡選手の勝ちとしたジュリー(審判委員)制度が批判を浴びました。こうした制度の導入に関して、日本は国際柔道連盟(IJF)で何の発言権も持っていないのが実情です。
IJFには200の国と地域が加盟。マリウス・ビゼール(オーストリア)会長と20人の理事が運営している。日本は上村春樹・全柔連会長(ロンドン五輪日本選手団団長)が指名理事を務めているが、議決権がない。1997年のカラー柔道着導入には日本が強硬に反対したが、「ファンにとって見やすい」という理由で押し切られた形となった。