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<女王・谷亮子の提言> 「勝つために日本柔道がすべきこと」
text by
赤坂英一Eiichi Akasaka
photograph byNanae Suzuki
posted2012/08/30 06:01
'92年バルセロナ以降、5大会連続でメダルを獲得した元48kg級の
女王・谷亮子が口を開いた。日本柔道復活のため、いま何が必要なのか。
「亮子なんか追い込めば追い込むほど結果を出したもんだ」――吉村和郎団長の帰国会見での発言が、柔道の偽らざる現状を象徴していた。全盛期の谷のような勝負強さがいまの選手には足りない。日本中の誰もがそうした思いを抱いた。一部報道では谷自身が自分と同じ48kg級で敗退した福見友子を手厳しく批判、のみならず、4年後のリオ五輪で現役復帰を目指している、とも伝えられた。
現役復帰については、「ない」とはっきり申し上げておきます。
現役復帰については、「ない」とはっきり申し上げておきます。一部マスコミの復帰に関する問いかけに、「そうですね」とお答えしたらちょっと早合点されただけ。福見選手をはじめ、選手全員が全力を尽くしたと私は思います。勝ったにしろ負けたにしろ、全力で戦ったことには敬意を表したい。
それでも、あえて最も大きな敗因を挙げるとするならば、「心技体」の「心」の部分。モチベーションの持ち方とか、常に前へ前へと出て行く姿勢だとか、そういうものが足りなかったんじゃないか。「心技体」とは最初に「心」があってこそ「技」と「体」につながっていく、という意味ですから。
その点で一番気になったのは、試合中に息が上がっている選手が多かったこと。あからさまに、きついな、しんどいな、という顔を見せる選手が増えてるんですよ。
金を獲得した松本薫の攻める姿勢こそ、柔道の本来あるべき姿。
福見選手にしても、相手に予想外の動きをされて、表情が固まってしまうときがあった。彼女の柔道は一本勝ちできるスタイルなんですが、そのぶん相手に動きを読まれると、逆に一本負けする恐れも出てくる。3位決定戦でそういう面が出てしまったのは残念でした。
私たちの時代は、相手につけ込まれるような表情を見せるな、と指導されたものです。逆に外国の選手の息が上がると、いまがチャンスだ、攻めるタイミングだと、積極的に技を仕掛けていった。女子57kg級で金メダルを獲得した松本薫選手は、そういう攻める柔道ができていた。躍動感があり、前へ前へ出て行って、一度も後ろに下がらなかった。あれが柔道の本来あるべき姿なんですよ。