濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
アメリカにも立ち技ブームが到来か!?
新団体発足で加速する格闘技界再編。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byGetty Images
posted2012/08/28 10:30
かつてのK-1のヒーロー、ミルコ・クロコップ。UFCに参戦し、昨年引退を表明していたが、新生K-1のために復帰を決意。立ち技の舞台でその輝きを再び取り戻すことはできるのか、注目が集まる。
この秋から冬、そして来年にかけて、立ち技格闘技は再編の季節を迎えることになる。
まずは10月14日、K-1が両国国技館大会を開催。このK-1は、かつて格闘技ブームを牽引したFEG体制によるものではなく、香港に拠点を置く新会社。いわゆる“新生K-1”だ。魔娑斗をエグゼクティブ・プロデューサーに迎え、5月にスペインで再旗揚げ大会を行なっている。新体制による初の日本大会では、ヘビー級GPの開幕戦を予定。
一方、新生K-1のライバルである欧州のビッグプロモーション『グローリー・ワールドシリーズ』は、12月の日本大会開催を発表した。こちらも主軸はヘビー級。なんと16名参加のワンデイ・トーナメントだという。セーム・シュルト、レミー・ボンヤスキー、ピーター・アーツといった、K-1優勝経験のあるビッグネームが出場予定選手に名を連ねる豪華版だ。
この2大会に期待されるのは、日本格闘技界の“景気回復”だろう。ビッグイベントならではの高揚感を求めるファンは多いはずだ。
ただし、この“立ち技再編”における中心地は日本ではない。
重要なマーケットではあるものの、あくまでも世界の一部なのだ。かつてのK-1のような“日本発世界”というベクトルではない。
新団体の“仕掛け人”はUFCを放送していた「Spike TV」。
では、中心となるマーケットはどこか。それはアメリカである。
8月21日、K-1とアメリカのケーブルおよびCSテレビ局Spike TVの提携が発表されたのだ。今年の大会は同局のウェブサイトで、来年の全4大会はテレビで生中継を行なう予定だ。
Spike TVは、UFCがブレイクするきっかけとなった選手育成リアリティ・ショー『THE ULTIMATE FIGHTER』を放送した局である。ここでK-1が放送されれば、アメリカの格闘技ファンに与えるインパクトは大きい。
Spike TVによる中継の効果を、北米の格闘技とメディア事情に詳しい高橋ターヤン氏はこう語る。
「Spike TVは、ケーブルテレビの基本設定に入っている無料チャンネル。アメリカはケーブル大国だけに、約1億人が視聴可能と言われています。特に若者層に向けた番組が多いため、K-1もUFCのような人気を獲得する可能性がありますね。“殴る・蹴る”だけとルールがシンプルな分、アメリカ人にはMMA以上に受け入れられやすいかもしれない」
過去、K-1はHD Netという局で放送されていたが、これは有料のプレミアム・チャンネル。視聴可能世帯数が大きく違う。UFCを隆盛に導いたSpike TVは、来年から人気上昇中のMMAイベント・ベラトールも放送。立ち技とMMAのセットで新たなブームを創出しようという狙いがあるのだろう。