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UFC常連も門戸を叩く格闘技ジムで
長南亮が思い描く、米国制圧の野望。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2012/09/10 10:30
今年4月に練馬にオープンした格闘技ジム『TRIBE TOKYO M.M.A』。代表の長南亮(写真中央奧)などによる指導を受けに、国内のトップ選手たちが練習に集う。
今、日本で最も注目すべき格闘技ジムはどこか。
多くの関係者は、PRIDEやUFCで活躍した長南亮が今年4月にオープンした『TRIBE TOKYO MMA』(以下TRIBE)と答えるだろう。
フリーのチームだった時代の仲間を中心にDEEP王者が2名(中西良行、白井祐矢)、パンクラス王者が1名(清水清隆)所属。岡見勇信をはじめUFCファイターも出稽古に訪れる。
これまで、日本におけるMMAトップファイターの練習は“自主性”の世界だった。作戦を立て、誰とどんな練習をするかを選手自身が考えてきたのだ。各ジムで行なわれる“プロ練”は合同スパーリングが主体。だが、TRIBEでの練習はアメリカ式だ。すべて長南が指導し、それぞれの弱点を容赦なく指摘する。スパーリングもマウントポジションやバックを取った(取られた)状態などシチュエーションを決めて行ない、得意なことだけをやらせることはない。
選手を個別で指導する、世界基準のトレーニング。
「たとえば、寝技で上から攻めるのが得意な選手には、あえて下から脱出する練習を重点的にやらせます。選手は得意なことをやりたがるけど、それではピンチになった時に何もできなくなってしまう」
自身も現役である長南だが、練習ではコーチに専念。常に客観的に選手の動きを確認しながら、テーマや疲労の度合いに合わせてスパーリング相手や練習メニューを変えていく。
「対戦相手のビデオを見て対策を考えるのはもちろんですが、ボクシングジムなど所属選手の出稽古先での練習も録画させて確認します。ケツを叩かないと練習しない選手もいれば、練習しすぎてしまう選手もいる。コンディションを踏まえた上で、それぞれに何が必要なのかを考えていくんです」
選手自身が練習メニューを考える時代から、すべてを任せることができる“MMA専門コーチ”の登場へ。アメリカでの練習経験が豊富な長南は、環境そのものを“世界基準”に変えた。