野ボール横丁BACK NUMBER
夏・春・夏と3季連続で準優勝……。
光星学院はなぜ優勝できないのか?
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/08/24 10:30
試合前、「いつまでも『白河の関』と言われないように結果を出したい」と話していた光星学院の仲井監督。3季連続決勝での敗北に、「またこれからやり直し」と前を向いていた。
昨夏の決勝前、仲井監督が残した忘れられない言葉。
忘れられないひと言がある。
「コンディショニングですね」
昨夏の日大三(西東京)との決勝戦に挑む前、仲井は、相手を上回るものがあるとすれば何だと思うかという質問に対し、そう答えた。日大三が1回戦から登場し5試合戦っていたのに対し、光星学院は2回戦から始まり4試合しか戦っていなかったからだ。
確かに、単純に戦力を比較したら、光星学院の方が分は悪いように思えた。勝機を見出すとしたら、そのあたりしかなかったのかもしれない。ただ、その言葉を聞いた瞬間、光星学院に流れはやってこないように思えた。
早実の和泉監督が「向こう10年勝てなくてもいい」と語った意図。
大学野球やプロ野球と違い、「高校野球」は極めて感情的なスポーツだ。感情が、球場の空気をつくる。
2006年夏、早実(西東京)が全国制覇を達成したときのことだ。監督の和泉実は西東京大会を制し甲子園出場を決めた際、お立ち台で「向こう10年勝てなくてもいいから今年は何としても勝ちたかった」と声を震わせた。
和泉は、のちに「意図的だった」と告白している。つまり、野球ファンの心理を意識しての発言だったというのだ。それは照れ隠しのようにも聞こえたが、ことの真偽はともかく、あのひと言が、甲子園でも勢いをつくったことは確かだった。
斎藤佑樹(現・日本ハム)というエースがいたこと。そして、先輩である王貞治(当時ソフトバンク監督)が病床の身にあったということ。それらの要素と相まって、今年は早実の年なのだという流れが生まれた。
仲井は、「大人」なのだと思う。
今夏のチームも、主将の田村龍弘、北條らを始め、実に大人びていた。だが、高校野球の文脈でいくと、いくぶんドライ過ぎたのかもしれない。