野球善哉BACK NUMBER
光星の田村、北條を封じた大阪桐蔭。
2年生捕手・森友哉の巧みなリード。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/08/23 18:30
197センチのエースを支えたのは170センチの捕手・森友哉。小兵ではあるが、昨秋から大阪桐蔭で正捕手を務め、守備に打撃に大活躍。プロ球団が注目するキャッチャーである。
光星学院(青森)の2人のスラッガー、田村龍弘、北條史也を抑える配球があるとしたら、ひとつしかないと思っていた。
例えば、準決勝で敗れた東海大甲府(山梨)・石井信次郎捕手は試合後にこう話していた。
「2人を抑えようとするのであれば、インコースのストレートを意識させて、外の変化球、ワンバウンドになるくらいの球を投げないといけないと思います」
内に速く、外に緩く――。
石井の意見はもっともだと思ったし、これまで田村と北條に打たれてきた投手(や捕手のリード)は、この配球を非常に強く意識してきていた。
しかし、神村学園(鹿児島)の柿沢貴裕がそうだったように、あるいは“奪三振マシン”桐光学園(神奈川)の松井裕樹がそうだったように、あるいは、神原友をはじめとする東海大甲府の3人の投手がそうだったように……少しでも甘く入れば、2人のスラッガーはきっちりと打ち返してきたのである。
「ボール1個分くらいだったと思うんですが、それでも、打ち返された。これが光星学院のバッター、全国に通用するバッターなのかと思った」と石井は話していた。
だから今日の試合、大阪桐蔭のエース・藤浪晋太郎が光星学院打線を抑えようとするのであれば、彼らと同じことをした上で、そのさらに上を行くピッチング……つまり、ボール1個分も間違えない完璧なピッチングをしなければならないと思っていた。
2年生らしからぬ強気な捕手・森友哉が選んだ配球とは?
「逃げないで行こうと思います。甘くなることを気にするよりも強気で攻めていきたい」
藤浪をリードする大阪桐蔭の2年生捕手・森友哉が試合前に言った言葉に、勝負の分かれ目はあると思っていた。
しかし、違った。
森は、試合が始まると、その言葉から筆者が予想していた配球とはまったく違うリードを施してきたのである。
そして藤浪も、勝負所では決して間違いを起こさなかった。