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日本マラソン復活へ金哲彦が提言!
世界と戦うには何が必要なのか? 

text by

松原大輔

松原大輔Daisuke Matsubara

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photograph byKaoru Watanabe/JMPA

posted2012/08/24 10:30

日本マラソン復活へ金哲彦が提言!世界と戦うには何が必要なのか?<Number Web> photograph by Kaoru Watanabe/JMPA

ロンドン五輪最終日の8月12日に行われた男子マラソン。日本勢として2大会ぶりの入賞を果たした中本(6位)は、「“マラソンの日本”を復活させたい」と語ったが、その道のりは険しい。

これまでの五輪とは明らかに変わった“レースの質”。

 男子の結果は以下の通りになりました。6位に中本が入賞する形で、男子マラソンはなんとか首の皮が一枚つながったといったところでしょうか。やはり上位はアフリカ勢が占めています。

<男子マラソン 結果>

1   スティーブン・キプロティク(ウガンダ)  2:08:01
2   アベル・キルイ(ケニア)                    2:08:27
3   ウィルソン・キプサング(ケニア)         2:09:37

6   中本健太郎(日本) 2:11:16  (自己ベスト:2:08:53)
40 山本亮(日本)        2:18:34  (自己ベスト:2:08:44)
45 藤原新(日本)        2:19:11  (自己ベスト:2:07:48)

 今回のレースで一番感じたことは、これまでのオリンピックとは明らかに“レースの質”が違うと言うことです。かつてのマラソンは、長距離をひたすら我慢の走りで粘るという“日本人の強み”に合っていたものでした。

 しかし近年、マラソンもレースの度に記録が更新され、完全にスピード重視となっています。今回は更に、アフリカ系の選手が急激かつ大きな揺さぶりをかけてくるレースとなったのです。

 これは男女共通して言えることですが、周回コースの特性を活かした急激なスピードアップ、その上げ幅がすごい。特にケニアとエチオピアの選手が互いを牽制するための揺さぶりに、他のほとんどの選手は翻弄されてしまったのです。余談ですが、ウガンダのキプロティク選手はケニア、エチオピア間の争いを傍観し、“漁夫の利”を得た、といったところでしょうか。

このままでは、オリンピック出場権すら危うい事態にも……。

 日本勢はそのレースに参加すらさせてもらえなかったというのが実情です。唯一、中盤まで藤原がそれについていけたのは収穫でした。彼はこのような激しい緩急をつけたレースを想定し、トレーニングを積んでいたため、対応できたのでしょう。

 ただ、残念なことに体がそれに最後までついていけなかった。中本はそんな藤原の背中を追いかけていき、見事入賞を果たした。結果的に、藤原が中本を引っ張り、アシストする形となりました。

 レースの質の変化は今回のオリンピックでより顕著になり、これからのレースの主流となるでしょう。

 当然、こういったレースの質の変化に対応できなければ日本のマラソンはますます先細りとなるのは言うまでもありません。はっきり言ってこのままではさらに勝てなくなります。もっと言うと、オリンピックの出場権すら危うい、そんな事態がくるかもしれません。それほど、このレースの質の変化は大きなものでした。

 では、今後、日本のマラソンはどうすればいいのか。大きく分けて、二つの事が言えます。

 一つは、選手たちが世界に出て戦うということです。

【次ページ】 日本マラソン界のガラパゴス化が進む背景とは?

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