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関塚ジャパンの“献身的な王様”、
清武はA代表で遠慮を捨てられるか?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2012/08/14 10:31
韓国に敗れた直後は、ピッチに横たわり天を仰いだ清武。試合後のコメントでは、「五輪でゴールを決めたかったけど、チームのために必死にやったし、悔いはない」と晴れやかな表情を見せた。
チームには王様がひとりいるものだ。
要は、誰を中心にしたチームであるかということ。
日本代表でさかのぼってみれば中田英寿や中村俊輔、今のザックジャパンなら香川真司というよりもむしろトップ下に置かれている本田圭佑か、あるいはボランチの位置で指揮棒をふるう遠藤保仁だろうか。
ではロンドン五輪で躍進した関塚ジャパンの王様と言えば誰か。
頭に浮かんでくるのは一人しかいない。そう、清武弘嗣――。ただそのことを本人にぶつけたら“僕が王様なんて違いますよ”と真顔になって否定しそうな気もするが……。
彼はいつも誰かの代役だった。王様ではなかった。
大分トリニータのときは金崎夢生の代わりだったし、セレッソ大阪でも香川真司や乾貴士の代わりだった。その悔しさをバネに、というならよく聞く話なのだが、清武の場合はちょっと違う。彼から以前、こんなことを聞いたことがある。
「僕は人を蹴り落としてまで上に行こうっていうふうには思わないんです。みんなライバルなんだろうけど、ライバルみたいに意識しないというか、思わないというか。そりゃ自分も(試合に)出たいですよ。でもチームがいいのが一番で、そのなかで自分も出られればいいじゃないですか。僕の性格がプロ向きじゃないのかもしれませんけど(笑)」
攻撃も守備も汗をかいて献身的に働く王様のチーム愛。
俺が俺が、ではなく、みんなとともに、というタイプ。
誰もがチームのために汗をかき、前線からプレッシングサッカーを機能させ、攻撃になると連動しながらゴールへと向かう。ロンドンの大舞台に立った関塚ジャパンは清武のそんな色がチーム全体の色としてしっかりと染まり、それがチームのポテンシャルとして引き出されたような印象を受けた。
攻撃も守備も汗をかいて献身的に働く王様のチーム愛。
強豪スペインには執拗なプレッシングでたじろがせた。グループリーグ第2戦モロッコとの一戦では、ボールを中央で受けると迷うことなく前線にロングパスを送って永井謙佑の決勝点をアシストしている。