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なぜか金が獲れない……男子柔道。
日本柔道の方向性は間違いなのか? 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byKaoru Watanabe/JMPA

posted2012/08/01 16:30

なぜか金が獲れない……男子柔道。日本柔道の方向性は間違いなのか?<Number Web> photograph by Kaoru Watanabe/JMPA

決勝でマンスール・イサエフ(ロシア)に負け、銀メダルとなった中矢力。腕を負傷しながらの銀メダルは堂々たる成績のはずだが「日本代表として出場して、絶対金メダルを取らないといけないという気持ちでやったので……」とコメントした。

海外選手は日本とは異なる方向から勝利を目指している。

 言ってみれば、駆け引きに長けた海外の選手にしてやられた、そんな試合が続いている。

 裏返して言うなら、海外の選手は日本とは異なる方向から勝利を目指している。それを凌駕できなかったことが、金メダルに届かなかった理由でもある。

 それでも、日本は日本の柔道を目指すしかない。

 手足の長さ、パワーなど身体能力で上回る海外勢と同じ土俵に上がっては、なおさら勝ちは見えなくなる。

 また、柔道発祥国とはいえ、世界中に広く普及し競技人口も世界のトップにはない。競技を続ける環境でもフランスなどと比べれば劣るのが現状だ。その中で、一定の地位を保持し続けているのは、常に金メダルを目標に掲げるプライドとともに厳しい練習に耐え、日本らしい柔道にこだわってきたからこそだ。だから金メダルではなくとも、メダルを3個得ることができたのではないか。

「切れ味の鋭い投げ技で一本を取る」という日本の柔道をアピール。

 そして、日本らしさを世界に示しているのも事実だ。

 それは、切れ味の鋭い投げ技で一本を取るということだ。特に平岡や海老沼が試合で示した技の切れ味には、観客から何度も歓声が起こった。

 まぎれもなく、日本が目指す「一本を取る柔道」を体現する瞬間はあったし、日本の柔道の魅力と存在感を伝えてもいた。

 むろん、課題は少なくないだろう。例えば、技を返されての敗戦が目立つのも、今後、考えなければいけないところだ。

 ただ、大きな方向性を考えてみるならば……結果につながっていないことがもどかしくはあっても、同じ道を進み、さらに突き詰めていくしかない。

 柔道も残り3日間となった。これから登場する3選手、西山将士(90kg級)、穴井隆将(100kg級)、上川大樹(100kg超級)の戦いぶりに注目したい。

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