ロンドン五輪EXPRESSBACK NUMBER
なぜか金が獲れない……男子柔道。
日本柔道の方向性は間違いなのか?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2012/08/01 16:30
決勝でマンスール・イサエフ(ロシア)に負け、銀メダルとなった中矢力。腕を負傷しながらの銀メダルは堂々たる成績のはずだが「日本代表として出場して、絶対金メダルを取らないといけないという気持ちでやったので……」とコメントした。
届きそうで、届かない。
軽量級から始まった男子柔道は、7月31日で4つの階級が終わった。日本は初日の60kg級で平岡拓晃が銀メダル、2日目の66kg級では海老沼匡が銅メダル、3日目には73kg級の中矢力が銀メダルを獲得した。
4階級のうち、3階級でメダルは確保している。しかし、日本男子が目標に掲げる金メダルには届かずにいる。
北京五輪で初戦負けを喫し、大きな批判を浴びた平岡は、リベンジを誓ってロンドンに臨んでいた。それがかなわなかった悔しさを露わにしながら、試合を振り返った。
「4年間我慢をしてきた自分のためにも金メダルを取りたかったのですが、だいぶ悔しいです。4年間、金メダルを取ることを考えてきました。何度でも同じことを言いますが、悔しいです」
昨年の世界選手権王者であり、今回が五輪初出場だった海老沼にも、試合後、一切喜びの言葉はなかった。
「金メダルしか目指していませんでした。銅メダルじゃ、だめだと思います」
そして3日目の中矢。
「この色のメダルは、うれしくないです。絶対に金メダルを取らないといけないという気持ちでしたが、まだまだ甘いとわかりました」
「型に嵌れば強いが変則的なスタイルに弱い」という十年一日の問題。
彼らは金メダルだけを目指し、あと少しのところに迫りながら、届かなかった。
敗因はどこにあるのか。
あえて共通項をみつければ、ひとつには、自分の組み手、型になったときには強いが、そうならなかったときにしのぐ術に欠け、相手の得意な組み手を容易に許してしまうことだ。
篠原信一監督も2日目が終わった段階で、こう指摘した。
「相手の得意な組み手にさせてしまうとやられるのに、そうさせてしまったことが甘さです」
平岡が決勝で外巻込、海老沼は準決勝で隅返で思いっきり裏返されたのは象徴的だ。
さらに課題をあげれば、変則的なスタイルの柔道への対応もあらためて浮き彫りになった。また、きちんと組んだら日本の選手は強いことがわかっているために、組み手争いで容易に組ませない相手もいる。