ロンドン五輪EXPRESSBACK NUMBER
盤石の金メダル候補、福見友子敗退。
初五輪で待ち構えていた「魔」の瞬間。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTetsuya Higashikawa/JMPA
posted2012/07/29 13:30
得意の形に持ち込めず、準決勝で敗退。呆然とする福見友子。相手の研究と対策が勝っていたのか……。次の大会での成長に期待したい。
魔が差したとしかいいようのない場面だった。
28日、柔道の初日を迎えた。行なわれたのは男子60kg級と女子の48kg級。
男子の平岡拓晃は銀メダルを獲得したが、48kg級に出場した福見友子は、メダルなしに終わった。
男女全階級の中で、もっとも金メダルに近いと見られていた階級である。
全日本女子の園田隆二監督は言った。
「(大会の)入りとしては最悪ですよね。いちばん(金メダルが)堅いと思っていたところがこういう結果なので」
ドミトルは2009年に一本勝ちした相手だったが。
福見は、2008年の秋以降、2010年に中国で行なわれたアジア大会で地元の選手に不当な判定で負けたことを除けば、外国人選手に無敗を誇ってきた。それを考えれば、「堅い」と考えていたのは当然だろう。
大会までの調整も順調そのものだったと、園田監督も、福見自身も認めている。
1回戦こそ硬さのある立ち上がりながら、ゴールデンスコア(延長戦)で絞め技で一本勝ちすると、続く2回戦でも合わせ技一本。準々決勝も優勢勝ちと、ひとつひとつ勝ち上がってきた。
だが、準決勝で敗れた。相手は北京五輪金メダルのドミトル(ルーマニア)。金メダリストとはいえ、福見は2009年の世界選手権で一本勝ちしている相手であり、ドミトルの近年の成績を見ても、決して難敵とは言えない相手である。
勝負を分けたのは、たったひとつの場面だった。
「やっちゃいけない動き」が、あそこで出た。
開始32秒、福見に指導が与えられる。極端に防御の姿勢にあるという指摘だった。
そして1分35秒。福見が大外刈をかけるがこれを返され、技ありを奪われる。
これが試合の決め手となった。その後、ドミトルは守りに入り、2度指導を与えられるが、試合は終了。その後の3位決定戦も福見は一本負けを喫し、メダルを手にすることなく終えた。
こうした結果で大会を終えることになった最大のポイントは、あらためて振り返ってみても、ドミトルとの試合で仕掛けて返された場面だ。
大外刈をかけたとき、福見は組み手が十分ではないように思えた。相手も崩しきれていない。重心もやや後ろに残っていたようにも見えた。だから返された。
「やっちゃいけない動きというのか、ああいうのがあそこで出たというのがいちばんの敗因だと思います」
園田監督もそう指摘するが、福見らしくない強引さが感じられた。