ロンドン五輪代表、最大の挑戦BACK NUMBER
関塚ジャパン、モロッコ破り決勝Tへ。
2つの“誤算”克服し、成長を証明。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNaoki Ogura/JMPA
posted2012/07/30 12:00
スペイン戦で再三の決定機を外した永井だったが、モロッコ戦ではそのスピードを生かし、値千金の決勝ゴール。セント・ジェームズ・パーク(ニューカッスル)を埋めた観客も総立ちで沸いた。
後半、モロッコの選手の足がピタリと止まった理由。
「だから、前半は、あまり無理せずな感じで0-0でいいと思っていた。後半になって、ある程度の時間になれば、自分らの方が動けるようになると思っていたんで。相手に攻められて、危ないシーンもあったけど、前半を無失点で終えられたのは大きかった」
山口螢は、そう語った。
後半、日本は時間を追うごとに、本来の姿を取り戻していった。
そして、後半25分過ぎからモロッコの選手に異変が起きたのである。ピタリと足が止まり始め、ドライな芝に慣れた日本のパススピードと、運動量が落ちない日本選手の動きについて来れなくなってきたのだ。
これには、伏線が敷いてあった。
吉田が、言う。
「前半、相手の勢いがあったんで、僕らは急がず、何度もサイドチェンジして、相手を走らせるようにしていたんです。それが効いて来て、残り20分ぐらいになって、モロッコが失速した」
「やっと決まった。よかったっす」(永井)
モロッコは、全体が徐々に間延びし始め、最終ラインの背後にも大きなスペースが出来るようになっていた。後半34分には、永井からダイレクトで受けた山口が強烈なシュートを放つなど、前半とは異なり、シュートシーンが増えていたのだ。
永井のゴールは、こうしたプロセスの中で生まれた。後半39分、清武がDFの背後に出したボールに反応した永井は、GKアムシフが前に出てくるのを見ながら「遅いから行ける」と思ったという。そのままスピードを緩めることなく、GKの手先で右足アウトサイドで蹴り上げ、バウンドしたボールはゴールに転がった。昨年6月のオーストラリア戦で見せたゴールと酷似した決勝ゴールだった。
「やっと決まった。よかったっす」
試合後、永井は、満面の笑みを浮かべた。スペイン戦でゴールを外しまくり、責任を感じていたが、これでようやく取り戻したという表情だった。
日本は、この永井の1点を守り切り、1-0でモロッコを退けたのである。