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新人王候補にとって鬼門の8月――。
先達が語る“夏場の乗り切り方”とは? 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byHideki Sugiyama

posted2012/07/23 12:45

新人王候補にとって鬼門の8月――。先達が語る“夏場の乗り切り方”とは?<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

前半戦終了時点で15試合に登板し、7勝3敗、防御率1.41という安定した成績を残している野村祐輔(広島)。オールスターゲーム(第2戦)でも3回1安打無失点の好投を見せ、敢闘選手賞に選出。セ・リーグ新人王最有力候補と言われている。

新人が悪循環に陥りやすい、8月の猛暑。

 それは、最も過酷とされる本格的な夏がやってくるからだ。

 1987年の新人王で、現在、巨人で二軍投手コーチを務めている阿波野秀幸が解説者時代に、こんなことを言っていた。

「1年目は右も左も分かりませんから、春のキャンプから飛ばすわけです。そうすると、ちょうど8月あたりにバテてくるんですね。しかも、連日の猛暑で体力は消耗し続けるんで結果も出なくなる。でも、新人だから登板の前日まで律儀にみっちり練習してしまう。全てが悪循環になるんです」

 中堅、ベテラン選手の多くが、「何年も試合に出続けることで養えるスタミナがある」と言うが、ルーキーや一軍経験が乏しい2、3年目の若手にはそれがない。

「夏場にパフォーマンスを落とさないためにも、投げ込みは必要」。

 登板前日の投げ過ぎはともかく、こういった不安要素を補うためにも、「練習でもしっかり投げ込むことが必要だ」と語っていたのは、現中日二軍投手コーチの今中慎二だ。

「今のプロ野球界は練習ではあまり投げさせない風潮だから、先発なら中6日のうち1回くらいしかブルペンで投げ込みをしないんです。だから夏場にパフォーマンスが落ちる。肩は消耗品だと言ってもね、やっぱり投げ込みで培われる肩の強さ、全体的なスタミナっていうのはあると思うんですよ」

 長いペナントレースを戦う上で、野球選手はルーティンを大事にする。先発なら<ランニングなどの軽めの練習→休養→各種トレーニング→遠投→ピッチング>といった練習内容で登板までの6日間を過ごし、リリーフであれば試合前に決められたメニューをこなし、試合では決まったタイミングでブルペンに入りピッチングをする。これは、投手のルーティンの一例ではあるが、若ければ若いほど、パフォーマンスが落ちても同じようにコンディションを整えようとする。

 近年、投げ込みをあまりしない若手が増えてきているというが、今中が言うように調子が落ちてくる夏にこそ、ブルペンに入る日を1日増やすなどしてコンディションを高めていくのも方法のひとつではないだろうか。

【次ページ】 昨年、澤村は不調からどう立ち直り新人王を掴んだのか。

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