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圧倒的な強さで連覇を達成しても、
バルサの攻撃サッカーは発展途上。 

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中嶋亨

中嶋亨Toru Nakajima

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photograph byDaisuke Nakashima

posted2010/05/19 10:30

圧倒的な強さで連覇を達成しても、バルサの攻撃サッカーは発展途上。<Number Web> photograph by Daisuke Nakashima

来季の放出も囁かれる中、優勝記念セレモニーで“照れ顔”を浮かべるイブラヒモビッチ

グアルディオラはインテル攻略法を見出したのだが……。

 このバルサの苦しい状況を変えたのがグアルディオラの采配だった。後半開始からミリートに代えてマクスウェル、63分にはブスケッツに代えてジェフレン、そしてイブラヒモビッチに代えてボージャンと2枚同時交代。ここからインテルの守備が揺さぶられ始める。

 マクスウェルは左サイド、ジェフレンは右サイドに入り、彼らの役目はクロスを放つのではなく、インテルの守備を「横に広げる」ことだった。左右両サイドがワイドにポジショニングを取ることで、インテルのDFはそれに釣られて選手間の横のスペースが以前よりも空くようになる。

 その変化をバルサは見逃さなかった。わずかなスペースにボージャン、ペドロが走りこむことでスペースをさらに広げ、メッシら他の選手がボールを持って仕掛けることができるようになった。その一連の流れから1点を奪い、決定的な場面を多く作り出したバルセロナだったが、しかし決勝進出に必要なあと1点を奪うには、時間が短すぎた。

インテル戦の敗北が呼び起こしたイブラヒモビッチ不要論。

 あそこまで守備を固めたインテルを揺さぶることに成功したグアルディオラの采配から見えるのが、完全に引ききった相手を崩すために必要なセンターフォワードのタイプである。それは、「イブラヒモビッチではなく、ボージャンである」ということだ。

 イブラヒモビッチが世界屈指のストライカーであることに間違いはない。だが、スペースを生み出す動きを得意とするFWではない。味方からスペースを与えられることで力を発揮する。シーズン後半、イブラヒモビッチのゴールは激減し、地元メディアは彼に厳しい見方をするようになった。カンプ・ノウでは時折ブーイングも起きるようになった。

 インテル戦では積極的に低い位置までボールを受けにまわり、周囲を生かそうとしていた。しかし、ペナルティエリア付近のより狭いスペース、よりプレッシャーのかかる場面では精彩を欠いていた。

 今やバルサの“名誉会長”となったクライフはかつてイブラヒモビッチを、「凡庸な選手の中では一流。しかし、一流の選手の中では三流だ」と評した。それがバルサという超一流の攻撃サッカーの中で示されたことは、何とも皮肉なことである。地元メディアは、バルサ史上最高額(約93億円)で獲得したイブラヒモビッチは来季、彼の古巣であるユベントスに放出されると実しやかに報じている。

【次ページ】 ビジャがバルサの攻撃サッカーをより洗練させる。

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