プレミアリーグの時間BACK NUMBER
4年ぶりに優勝したチェルシーは、
アンチェロッティのチームとなった!
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAction Images/AFLO
posted2010/05/14 10:30
モウリーニョ以来、グラント、スコラーリ、ヒディンクと優勝できなかったチームを見事に栄冠に導いたアンチェロッティ。試合後はピッチ上でマイクを通し「カモォォォォォン」と叫んだりし、選手よりも嬉しそうだった
プレミアリーグの2009-10シーズンは、5月9日の最終節で、チェルシーがウィガンに8-0と圧勝して自力優勝を決める“ブルー・デー”で幕を閉じた。
マンチェスターUによる、プレミア史上初の4連覇を阻止しての王座奪還。リーグ戦103得点のプレミア新記録樹立。トップリーグではクラブ史上最高となる8点差の勝利。ディディエ・ドログバのリーグ得点王タイトル獲得。チェルシーにとっては、まさに最高の筋書きで優勝が実現した。
そして最終節では、指揮官カルロ・アンチェロッティにとって記念すべき出来事も実現した。
7-0で迎えた85分、スタンフォード・ブリッジが、初めて“カルロ・コール”に包まれたのである。就任1年目のイタリア人監督は、敗戦や引分け後にブーイングは浴びても、自身を讃えるサポーターのチャントを聞くことなく37節までを終えている。初めて耳にする約4万人による「カルロ!カルロ!」の大合唱には、すっかり仏頂面で知られるようになった新監督も、四方のスタンドに向かって手を挙げて応え、照れ笑いを浮かべながら両手でガッツポーズまで作ってみせた。
「モウリーニョのチェルシー」を引き継いだ不幸を克服。
アンチェロッティは、4年前にプレミア連覇を成し遂げたジョゼ・モウリーニョ(現インテル監督)時代とほぼ変わらぬ主力メンバーを抱えたチームを引き継いだ。つまり「モウリーニョのチェルシー」も同然のチームを率いているということになり、後任監督が自身の手柄を証明することは極めて難しい状況だった。だが、チェルシーファンの大多数を占める、いまだにモウリーニョを崇拝して止まない「モウリーニョ信者」たちも、ついに「後任4人目」を認める気になったのだ。
アンチェロッティの評価に値する能力の1つは戦術面での柔軟性だろう。今季、開幕6連勝を飾った新体制下のチェルシーだが、うち3試合が格下相手の逆転勝利だったように、実際には苦戦を強いられることが多かった。根本的な原因はアンチェロティが採用したダイヤモンド型の中盤だった。トップ下に当たる頂点の適任者が不在で攻撃が完全に機能せず、守ってはスペースが空くアウトサイドを敵に走られて危機を招いた。初黒星を喫した相手は、奇しくも最終節と同じウィガン。アウェイでの7節では、ポゼッションこそ高かったものの容易にゴールを奪えず、サイドからのカウンターに対処できないまま1-3で敗れている。