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<女子バレー司令塔の告白> 竹下佳江 「ラストチャレンジ」 

text by

吉井妙子

吉井妙子Taeko Yoshii

PROFILE

photograph byAsami Enomoto

posted2012/07/23 06:01

<女子バレー司令塔の告白> 竹下佳江 「ラストチャレンジ」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

選手の前では沈黙を守った'00年最終予選の屈辱。

――OQT前日までメンバーを絞り込めなかったことに戸惑いはありませんでしたか。

「17名から12名に絞られるメンバーはギリギリまで発表されなかったけど、そのためにコンビ合わせが出来なかったということはありません。眞鍋監督は秘密主義じゃないし、練習しているときにメンバーは絞られてくるので、発表こそされないものの、選手はうすうす分かっていますから。眞鍋監督の“調子のいい順番からコートに入る”という考えは一貫しているので、戸惑うことはないです」

――闘い切った後、「あの子たちに辛い思いをさせたくなかったから必死に頑張った」と言っていました。まだ、五輪出場を逃した2000年の最終予選が頭にあるのですか。

「まだ考えますね。私はバレーでいい思いも嫌な思いもさせてもらっているけど、今の選手たちにあのときの私のような屈辱を味わってほしくない、それだけはさせたくないという思いが凄く強かった。これ以上、嫌な思いをする人を増やしたくない。それはOQTが始まる前からずっと考えていました。

 でも、当時のことを今のメンバーに伝えたことはありません。辛かった思いは自分の中に仕舞っておけばいいことだし、あの時のことを口にしちゃうと却ってプレッシャーを与えてしまう。OQTが凄く重要な闘いだとは伝えたけど、自分の体験は抜きで話しました」

若い選手たちも、ほかの国際大会と五輪は別物と分かったはず。

――ロンドン五輪は竹下選手にとって3大会目。これまでの2大会はOQTですんなり切符が獲れた反面、五輪本番で「こんなはずじゃなかった」と戸惑うことが多かった。そういう意味では今回、OQTで苦しんだ経験が五輪で生きるのでは。

「そう思います。これまで五輪で受けていた洗礼をOQTで済ますことが出来たし、若い選手も、W杯やグラチャン、世界選手権などとオリンピックは別物だと分かったはずですから。他の強豪国はオリンピックになると、それまでの国際大会とはまるで別の顔になって挑んでくる。だから私たちもその上を行かなきゃならない。

 眞鍋監督は、オリンピックまでにチームがOQTと全く違う顔にならないと、メダルなんて到底辿り着かない、と話していました。今までは何となく感覚で理解していたものが、OQTを経験することによって、眞鍋さんの意図することを身体の隅々で理解できるようになったと思います。

 ここからどうやっていくか。眞鍋さんは昨年暮れに亡くなった松平(康隆)さんの言葉を借りて『常識の延長線上に勝利はない』と言っていたし『世界一の何かが5つはないと金メダルは獲れない』とも語っていました。私も全くその通りだと思います。

 サーブ、サーブレシーブ、ディグ(スパイクレシーブ)、ミスの少なさ、そしてハートの強さで世界一になれば可能性はあるかも」

【次ページ】 「獲りたい」から「獲る」へ。メダルへの意識が明確に。

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