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<女子バレー司令塔の告白> 竹下佳江 「ラストチャレンジ」
text by
吉井妙子Taeko Yoshii
photograph byAsami Enomoto
posted2012/07/23 06:01
「獲りたい」から「獲る」へ。メダルへの意識が明確に。
ワールドグランプリを闘い終えた翌日の6月25日、日本バレーボール協会はロンドン五輪に出場する12名を発表。怪我のためW杯や世界最終予選を欠場していたセンターの大友愛と井上香織のベテラン勢を戻し、世界選手権の時とほぼ同じ顔ぶれになった。眞鍋監督は「メダルを獲るためのベストの12人」と胸を張り、「大友はスピードがあり、竹下とのコンビは世界の高さでも止められない。井上にはブロックを期待したい」と語った。
苦戦した最終予選の反省から、五輪までの1カ月間に世界一速いバレーを追求し、世界のどこにもないような攻撃のバリエーションを増やすという。いずれにしても、その鍵になるのが竹下のトスワークだ。
――OQTで最後の切符1枚を獲ったにもかかわらず、今の全日本はメダルが夢物語じゃないような気もするんです。
「それを一番感じているのが私たち。それまでは、米国、ブラジルのトップ2が遥か彼方にいて、その下のグループに日本、中国、ロシア、イタリア、セルビアなどが団子状態で並んでいた。そのグループ間の距離が縮んで、ちょっとした作戦や選手の調子で順位が大きく変動する可能性が出てきた。極論するなら、日本は金もあれば5位タイもある。選手にしたら、こんな面白いことはありません。
前大会までは、『メダルを獲りたい』と言っても、それは正直に言うならイメージでしかなかった。でも、2年前の世界選手権で銅メダルを獲得してから、自分たちの意識がガラリと変わりましたね。こうやって闘えば、世界と互角に戦えるということを肌で理解できましたから。メダルがイメージから具体的なものへと、明確に見えてきたんです。もちろん、厳しいことは知っています。でも、メダルのシルエットが見えているのと見えていないのでは、明らかに違います」
「今まで蓄積したものを一滴も残さず、ロンドンに置いていきたい」
――その五輪をどう闘いますか。
「ワールドグランプリ期間中は試合では試せなかったけど、練習では速いバレーの追求やコンビ合わせを徹底してやっていました。まだ自分の理想には遠いですけどね。
そして、最終の12名に絞られたところからチームもまたグッと引き締まり、別の顔になって行きます。五輪仕様のユニフォームを渡され、いよいよ五輪モードとなると、12個の歯車がガシッと噛み合い、うなりを上げるほどに回転が高まるんです。OQTのように切符を獲るということではなく、五輪は先に進むだけだから、若い選手にはいい緊張を与えつつ、伸び伸びできる環境を作ってあげたい。
私も最後の五輪となると思うので、今まで蓄積したものを一滴も残さずロンドンに置いてきたいと思っています」