ロンドン五輪代表、最大の挑戦BACK NUMBER
課題の克服が検証できなかったNZ戦。
関塚ジャパンの真価、いまだ見えず。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byAsami Enomoto
posted2012/07/12 12:05
五輪前、国内最後の試合となったニュージーランド戦。清武は、多彩な攻撃を演出したが、決定機で決め切れられず、後味の悪い引き分けとなった。
温かい拍手とブーイング。
1-1のドローで終わったロンドン五輪壮行試合のニュージーランド戦は、高まる期待感にまるで冷や水を掛けられたような試合だった。
「3日間の練習でやってきたこと、トゥーロンでの反省点を今日の試合でどれだけ出せるか。その上で、しっかりと勝つことが今日の試合のテーマだった」
トゥーロン国際大会で3試合フル出場し、悔しい思いをした扇原貴宏は、そう言った。
そこに、さらに付け加えるとするならば、個々のコンディションとコンビネーションの確認がこの試合のテーマだった。
出足は、素晴らしかった。
もともと、このチームは立ち上がりに難があったが、集中して入り、清武弘嗣を軸とする攻撃陣は相手を圧倒した。
前半こそ点は奪えなかったが、後半26分、オーバーエイジ(OA)枠の徳永悠平のミドルシュートのこぼれ球を後半途中出場の杉本健勇が決め、先制点を奪った。
だが、前後半合わせて19本ものシュートを放ったものの、ゴールはわずかに1点。ポゼッションが出来ている余裕があり、崩せてはいるものの、フィニッシュでの精度を著しく欠いた。そのツケが回ってきたのか、ロスタイム、村松大輔のミスから失点してドローに終わり、なんとも後味の悪い試合になってしまった。
トゥーロンで露呈した3つの課題は修正されたのか?
内容、結果ともに壮行試合としては寂しいものになったニュージーランド戦。では、前回、このコラムで指摘した、トゥーロンで露呈した3つの課題は、修正されていたのだろうか。
1つ目は、“守備の再構築”。トゥーロンでは両サイドを突破され、そこから失点を重ねた。今回、トゥーロンでは不在だった酒井宏樹が右サイドバックに入り、徳永が左サイドバックに入ることで、最終ラインには安定感が見られた。相手との力関係もあったが、サイドを突破されることはほとんどなかった。特に連係が危惧された徳永は、関塚監督も「徳永が入ることで、守備はしっかりやれていた」と言うように、初めの実戦にしてはチームへのフィット感は上々だったのである。
2つ目は、“1トップの再考”だが、途中出場の杉本が徳永のシュートのこぼれ球を詰めて先制ゴールを挙げた。関塚監督は、トゥーロンで期待された指宿洋史やアジア最終予選時ではエースだった大迫勇也ではなく、最終的に杉本を選出したわけだが、それが結果として表れたのである。
3つ目は、“リズムをどう変えるか”である。
序盤はショートパスばかりになってしまい、ドリブルをはさむ等々、攻撃のメリハリをつけられなかった。だが、永井謙佑や齋藤学がドリブルをすることで、リズムに変化が起きた。このチームは、リズムを変えられるボランチがいないので、個人のドリブルなどでテンポを変えていくしかない。そういう意味では、変化を付けられる選手が見えたのは良かった。
こうして課題の克服という観点でニュージーランド戦を見てみると、さほど悪くない。勝利という結果は出なかったが、成果は出て来ているように思える。