ロンドン五輪代表、最大の挑戦BACK NUMBER
課題の克服が検証できなかったNZ戦。
関塚ジャパンの真価、いまだ見えず。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byAsami Enomoto
posted2012/07/12 12:05
五輪前、国内最後の試合となったニュージーランド戦。清武は、多彩な攻撃を演出したが、決定機で決め切れられず、後味の悪い引き分けとなった。
権田修一が語った「勘違いするな」の意味。
だが、権田修一は、言う。
「今日、自分らがある程度、思うようにやれたのは、ニュージーランドとの力関係では自分たちが上だからです。これで、すべてが良くなったと思う選手は、一人もいないでしょう。勘違いしちゃいけない。むしろ、この相手でこのぐらいしか出来なかったことに、ヤバイと危機感を覚えるべきだと思います」
権田は「勘違いするな」と語ったが、その言葉通り、この試合は成果をそのまま評価できない幾つかの誤算があった。
ニュージーランドは、トゥーロンのトルコやエジプトのように当たりが激しく、ガツガツ来るタイプではないので、厳しいプレッシャーの中でのプレーの精度を確認することができなかった。
また、相手にボールを支配されて押し込まれるような時間がほとんどなかったので、相手の波状攻撃の中、どれだけ守備が耐えられるのかをチャレンジすることができなかった。
さらに、宇佐美貴史と酒井高徳がクラブの事情で参加できず、吉田麻也も負傷上がりのために実戦で試せなかった。宇佐美と酒井高は、トゥーロンでの活躍を評価されて選出されたメンバーなので、清武や東ら、以前からの主力組とコンビネーションを研く必要があった。また、吉田はOA枠で最終ラインの責任を負う立場。残り、わずか2試合(18日ベラルーシ戦、21日メキシコ戦、共にイギリスにて)で最終ラインの守備の連係を確認しなければならず、不安は隠せない。
このチームの本当の力は次のベラルーシ戦で見られるか?
いくつかの誤算により、課題の克服はカモフラージュされてしまったのだ。
「本番まで2週間しかないですけど、これからチームが成長できるかどうかは、個々の意識によると思います。それぞれが本大会でどういう結果を望むのか。どういうチームにしていきたいのか。そして、ニュージーランド戦で見えた課題を次のベラルーシ戦で、どのくらい対応できるのか。その上積み具合で、このチームの伸びしろや力が分かる。そこで何も変わらなければ、それまでのチームということ。そこを各選手が考えて、準備していかないといけないと思います」
権田は、厳しい表情で、そう言った。
ニュージーランド戦は、コンディションをはじめ、攻撃のパターンやコンビネーションを確かめるスパーリングパートナーとしては良かった。また、清武が攻撃の軸であることが改めて確認でき、OA枠の徳永が思った以上に機能していることなど、いくつか収穫もあった。
だが、トゥーロンでの課題が今、どの程度、克服できたのか。このチームの本当の力は、いったいどの程度なのか。この時期だからこそ一番知りたい、そして肝心なところは見えてこなかった。1週間後の18日、果たしてベラルーシ戦で、その答えの一端を垣間見ることができるのだろうか――。