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伝説が観たいなら是非地方大会へ!
夏の高校野球、要注目の5都府県。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2012/07/11 10:30
「みちのくのダルビッシュ」の異名を持つ大谷翔平(花巻東)。1m93cmの長身から投げ下ろす最速151キロの直球に加え、フォーク、スライダーなど変化球も多彩。さらに高校通算54本塁打を誇る打撃も超高校級だ。
ストレート一本槍でも打たれない関東一の中村祐太。
●東東京
2年生エース・中村祐太を押し立て選抜4強進出を果たした関東一をはじめ、甲子園の常連校にして渡邉隆太郎、石倉嵩也、木部拓実の投手3本柱を擁する帝京、そして本格派、鈴木誠也の爆発力に懸ける二松学舎大付と、強豪校がそれぞれ切り札を持ってこの夏を戦うことになる。
その中で最大の注目校は関東一だ。エースの中村は、選抜大会では全投球のうち、ストレートの割合が90パーセント近くを占めたはず。こういう投手は、近年見た覚えがない。
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スピードがとくに速いわけではない。打者の近くでひと伸びするような球筋のよさは超高校級だが、球速はほとんど137、8キロとスピードガンには表示される。それでも打たれないのは、ボールの出どころが見えない投球フォームによるところが大きい。
1回戦 関東一 1-0 別府青山 (9回、2安打、13三振、完封)
2回戦 関東一 2-1 智弁学園 (9回、8安打、6三振、1失点)
準々決勝 関東一 4-2 横浜 (9回、5安打、1三振、2失点)
準決勝 関東一 1-6 光星学院 (3回、4安打、4三振、3失点)
以上は選抜大会の結果である。ストレート9割の投球でこういうピッチングができたことに、中村は大きな自信を持っただろう。
他校は当然、研究をしてくるはずだが、そのことを聞くと「夏までにはスライダー、カット、カーブ、チェンジアップ、タテスラに取り組む」と言ったあと、「でも基本になるのは真っすぐ。そこに変化球を見せ球として使えればもっと楽なピッチングができると思います」と締めくくってくれた。したたかな2年生投手である。
群雄割拠の大阪大会は事実上の甲子園優勝校決定戦!?
●大阪
大阪を制する者は全国を制する、そんな言葉が生まれそうな予感がする。春の選抜大会、そのあとの近畿大会を大阪桐蔭が制し、他校の合言葉は「打倒! 桐蔭」。'80年代を席巻したPL学園がいたときと現在の大阪は非常によく似た状態に置かれていると言っていいだろう。
大阪桐蔭のエース、藤浪晋太郎は大阪というより、全国の球児から目標にされる存在になった。ストレートは優に150キロを超え、変化球はキレ味鋭いスライダー、カットボールを軸に、140キロを超えるフォークボールまで備え、プロレベルと言っても過言ではない。
わずかなスキは、選抜大会がそうだったようにストレートを狙われたとき。150キロを超える快速球が面白いように狙われ、ミートされているのを見て、高校野球もストレートとわかれば簡単にヒットにできる時代になったんだと痛感した。
それだけ前で紹介した関東一の中村は凄いわけだが、藤浪が春夏連覇を実現するためには、中村がそうしたように球の出どころが見えづらい投球フォームを意識するべきだろう。
それでも走攻守のバランスを考えれば、大阪桐蔭が甲子園までの最短距離に立っていることは明らかだ。選抜で大谷から死球を受け、2回戦以降欠場した田端良基(内野手)が帰ってくるので打線の破壊力は春を上回る。
この大阪桐蔭を上回る力を備えているチームは見当たらないが、足をすくう可能性のあるのが、選抜大会で2回戦に進出した履正社と、下級生が中心になって勢いに乗ったら怖いPL学園だろう。