EURO大戦2012BACK NUMBER
歴史の違いがPK戦の命運を分けた!?
スペインがポルトガルを下し決勝へ。
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/06/28 11:15
PK戦の順番は、スペイン側のシャビ・アロンソ(×)が両チームの一番手。その次はポルトガルのモウチーニョ(×)、イニエスタ(○)、ペペ(○)、ピケ(○)、ナニ(○)、セルヒオ・ラモス(○)、ブルーノ・アウベス(×)、セスク(○)という順番だった(カッコ内はPKの成否)。
死闘と呼ぶにふさわしい120分の戦いは、消化不良な幕引きとなった。クリスティアーノ・ロナウドがPKを蹴らないまま、敗北の瞬間を迎えたのだ。
試合直後に原稿を書いているため、詳しいことはわからない。蹴ることを拒否したのかとも思ったが、5人目、勝負を決める男として登場する予定だったのだろう。
よくよく考えれば、ロナウドがPKを拒否するというのはありえないことだ。彼はいつも、自分を誇示しながらプレーする。FKのときの、もったいぶった儀式を見てほしい。あのときロナウドは、世界中に自分を見せているのだ。やはり、最後に出てくるつもりだったに違いない。
PK戦は時の運といわれもするが、必ずしもそうではない。
PK戦のポルトガルは、どこかおかしかった。
4番目に蹴るはずのブルーノ・アウべスは、一巡早くスポットへ歩み出したのだ。滅多に見られない勘違い。そのアウべスが案の定、バーにぶつけてしまった。
ファイナルを目前にして、ポルトガルは金縛りにかかっていたのだろうか。その姿は、スペインとは対照的だった。
スペインは一番手のシャビ・アロンソが止められたが、直後、カシージャスのセーブによって追いつくと、ふたり目からはきっちりと成功させていった。セルヒオ・ラモスなどは、ピルロのようにキーパーをあざ笑うかのようなチップキックを決めた。スペインは過度の緊張とは無縁のように見えた。
PK戦は時の運といわれもするが、必ずしもそうではない。
勝ち続けるチームは平静を保ち、極限の瞬間にも堂々と技術を発揮する。勝ち慣れていないチームは身体が固くなり、ミスを犯す。
勝者の歴史を重ね始めたスペインと、いつも惜しいところで涙を呑むポルトガル。
双方の歴史の違いが勝敗を分けた、そういっても大げさではないだろう。