セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
バロテッリこそユーロ制覇のカギ。
新世代アズーリがイタリアを変える!
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2012/06/28 10:30
EURO準々決勝のイングランド戦、11本のシュートを放つも得点をあげられなかったバロテッリだったが、PK戦では自ら最初のキッカーに名乗りをあげ、マンチェスターCで同僚のGKジョー・ハートから見事ゴールを決めた。
“問題児”を庇護し、矯正するプランデッリ監督の父性。
トリノの育成組織が生んだ傑作DFといわれるオグボンナは、恵まれたフィジカルとしなやかなボール捌きを持つセンターバックとして将来を嘱望されている。プランデッリから受けた大抜擢に「代表デビュー戦は、夢のように足が震えた。監督に言われればどのポジションでもやる」と語り、代表入りへの恩義を強調する。真面目なことで知られる彼は、今後の代表でも“優等生”として模範になりうる存在だ。
一方、バロテッリが持つFWとしての圧倒的なポテンシャルに惚れ込んだプランデッリは、“問題児”が起こす破天荒な言動の陰にあるナイーブな面にも早くから気づいていた。
指揮官はしばしば“保護者”に変わり、バロテッリが問題を起こすたびに電話をかけ、平静を保つよう説き続けた。メディアを通して「ユーロ本大会での先発FWはバロテッリしかいない」と持ち上げつつ、「退場になってチームへ迷惑をかける選手はいらない」とエースの自覚を促すことにも腐心してきた。その信頼関係があるからこそ、アイルランド戦でのゴールパフォーマンスの誤解も、すぐに氷解することができたのだ。
イングランド戦の前には、怖れるものなどないはずのバロテッリが殊勝な言葉を吐いた。
「イタリア代表は、子供の頃から特別な存在だった。緊張するんだよ。自然なことだろ」
はにかんで憎まれ口をたたく未完のエースは、不器用な歩みながら今大会を通して1試合ごとに成長している。
新世代のアズーリは現代のイタリア社会を映す鏡である。
プランデッリの続投はイタリア協会から承認されており、大会後に始まるブラジルW杯予選で主役になるのは、バロテッリら新世代の選手たちだ。
第2、第3のオグボンナも、アンダー世代代表はもちろん各クラブの下部組織で来たるチャンスを窺っている。彼らは、他の欧州列強にようやく追いつく形で多民族共生社会となりつつある現代イタリアを映す鏡だ。
このEUROをきっかけに、アズーリ改革がいっそう進むのは間違いない。ポーランドとウクライナは、“UNITED COLORS OF ITALY”が芽吹いた地として記憶されるだろう。