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<ナンバーW杯傑作選/'95年8月掲載> 加茂周 「若手よ、みんな伸びてこい!」 ~代表監督就任後の独占インタビュー~
text by
小林達彦Tatsuhiko Kobayashi
photograph byHatsuhiko Okada
posted2010/05/12 10:30
一流国との差を肌で感じた英国遠征。
――先のインターナショナル・チャレンジ大会の話になりますが、そこそこ手応えはあったと見てよろしいんですか。
「まずは、世界のサッカーの一流国との差がはっきり掴めたということです。たとえばブラジルに3点とられて、そこで向こうが安心して手抜きしてくれたから、ようやく攻めることができたと。それまでは手も足も出なかったんですよ。相手が緩めてくれて下がってくれたからやれただけの話。スウェーデンはもう優勝のチャンスがなくなって、主力がみんな帰っちゃったあとのチームでしょう。モチベーションも低いしね。そういうチームとやって何とか引き分けることができた。そこに力の差が歴然とあるんです」
――初戦のイングランド戦はどうですか。
「もし勝てるとしたら第1戦だけだと思ってたんですよ。極東の三流国が来るって、なめてくるに決まってましたから」
――そうか、そうか。
「案の定そうなって、展開も1対1でいい恰好になったから、最後に勝負をかけたんですよ。それを批判する人もいましたけどね。なんで引き分けを狙わなかったのかと。でもウェンブリーに行ってイングランドに負けたって恥ずかしいことは何もないんですから」
――そうですよ。
「そうでしょう。勝ちにいったら負けたんですよ。しょうがないです。だけど、技術的な差を選手が肌で感じてくれたとは思います。パスの強さ、パスの強さを出すためのボール・コントロールの速さ、スイングの速さ。スイングが小さくて速い。強いボールが来ても一発でコントロールできるという。その面でやっぱりかなり差がある。ちょっと後ろ目に強いパスが来ても身体をキュッと反転してバランス崩さずにコントロールして、次の足でパスが出せるとかね」
――それがはっきり分かったというのは大きいですね。いままでそういうチャンスってなかったでしょう。
「ないですよ。だから、日本のチームにとってはすごくいい経験をさせてもらったなと思います、本当に」
アトランタ五輪組から、5~6人はA代表に……。
――代表はこれからまた試合がありますが。
「今年代表チームがやるのは8月の2試合以降、9月に1試合、10月に2試合。で、特に10月の分はアジアのチーム相手ですから、何が何でも勝っとかないといかんのです。アジアのチームを相手にするときは、もちろん勝ちにいくけども、まず、なんとしても負けられない。絶対に負けられない」
――これは非常に聞きにくい部分になるかもしれないけど、とりあえずいま日本サッカーは五輪出場を目指していますよね。その点、A代表の強化に支障はありませんか。
「これはね、加藤久強化委員長とも話し合ったんですけどね。五輪チームが優先ですよ、大会が終わるまでは」
――で、終わった時点で、五輪代表の中からも力のある選手が入ってくるわけですか。
「来年アトランタが終わったら、やっぱり5~6人は入ってきてくれないと」
――話は飛ぶんですが、監督の去就についてお聞きしたいんです。8月に答えを出すというような報道もありましたが。
「イングランドで外国人のインタビューに僕がポロッと漏らしたのが悪いんですけども、本当のところは、11月になってから、監督交代となったときに、次の監督が決まるまでに空白ができるのを避けたかったんです。特に12月、1月というのはものすごい大事なんですよ。わりあい選手をまとめて呼んでトレーニングできる期間なんですよね」
――そうか。そのときに監督がいなきゃ意味ないですものね。
「だから、代表チームの責任者というのは切れないようにしなきゃいけないんですよ」