Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER
<ナンバーW杯傑作選/'95年8月掲載> 加茂周 「若手よ、みんな伸びてこい!」 ~代表監督就任後の独占インタビュー~
text by
小林達彦Tatsuhiko Kobayashi
photograph byHatsuhiko Okada
posted2010/05/12 10:30
イングランドやブラジルの監督はもっと泣いてますよ。
――最後に、代表監督になられて、マスコミに対してやっぱり喋りにくいですか。
「うん、喋りにくいですよ。まず預かり物の選手でやってるということ。自分のチームの選手じゃないんだから。迂闊なことを言ったら、各チームと選手にまず迷惑がかかると。でも、日本はまだましなんですよ。イングランドとかブラジルの監督はもっと泣いてますよ。喋らんかったら喋らんいうて、クソミソに書かれるわけですから、見出し付きで。喋ったら喋ったで言葉尻捉えてガンガンやられるし。試合内容がちょっとでも悪いと勝ってもやられるんですからね。日本はまだましな方ですよ」
――でも、強化委員長と折り合いが悪いなんて書かれましたね。
「だから、久ちゃんにも僕は言ったよ。『僕はそんなつもりで喋ってない。それだけどこう書かれた』とかね。久ちゃんも『都合の悪いとこばっかり繋ぎ合わせでやられる』とか言うから、『それは久ちゃん、しょうがない』と」
――久さんとはそういう話は結構やってらっしゃるんですか。
「やってるよ。だから、久との関係は全然悪くないですよ。あいつもちょっと張り切りすぎた部分もある。でもそれはしょうがないよ。あの若さでこの組織の長に立ったんだから」
――そうですね。
「だから、『心配するな。お前、俺をクビにするポストにおるんや。代表の監督、お前クビにできるんじゃないか、気にすんな』とか言って(笑)」
――でもいい結果が出ないと、11月に本当にクビを切られるかもしれない。
「それはそうですよ。この仕事はもう最初からそういうもんなんですから」
――なかなかいい思いできませんね。
「うん。だから、この仕事引き受けるときにウチの家内に言いましたよ。いままでと全然違うから覚悟しといてくださいよってね(笑)」