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ヴィッセル神戸・西野朗新監督の野望。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byKyodo News
posted2012/05/21 11:35
ヴィッセル神戸のオーナー三木谷浩史氏は、西野朗新監督を迎えるにあたって「ACLに出場して優勝するということを目指しています」と改めて強調。西野監督はヴィッセルの弱点として「アタッキングサードのクオリティや、自陣のディフェンスゾーンでのウィークポイントがあるようだ」とコメントした。
「常勝チームを率いるよりも、中位にいるチーム」
「プレッシャーのない身体はフィット感がない。芝生の上にいるのが一番フィットしていて、グラウンドにいないと落ち着かない。自分は現場人だなあ、と思いましたね。現場復帰への思いが強いなかで、正式にオファーをいただいたのは神戸だけで、チャレンジしていく環境をしっかり持たせてもらえると強く感じることができた」
重圧と背中合わせにある充実感を、西野は取り戻したいと願っていた。チームをアジアの舞台へ導ける指揮官を、ヴィッセルは捜し求めていた。今回の契約は、どちらにとっても時宜にかなったものである。
ヴィッセルの監督就任を決めた理由が、西野にはもうひとつある。
「自分のスタイルとして、常勝チームを率いるよりも、中位にいるチームや、力はあるけれど出しきれていないチームを、トップグループへあげていく仕事にやり甲斐を感じる」
'98年から3シーズン半にわたって指揮した柏レイソルでは、'99年にクラブ史上初のタイトルとなるナビスコカップを獲得した。2000年には年間王者の鹿島を上回るシーズン最多勝ち点をあげた。北嶋秀朗、明神智和、南雄太、大野敏隆、平山智規らの日本人選手を自立させ、ブラジル人頼みだったレイソルを強豪へ押し上げた。
3大タイトル優勝4回、ACL優勝1回、クラブW杯3位の実績。
2002年から10シーズンにわたって率いたガンバ大阪も、かつては中位が定位置だった。
高いポテンシャルをピッチ上で発揮しきれていない選手たちに、西野は問いかけた。ボールポゼッションは、つねにゴールを意識したものでなければならない。リードしてもなお得点を奪いにいくことで、常勝チームにふさわしい攻撃力を身につけることができる、と。
先発メンバーのキャスティングや交代選手の投入で、指揮官が発したメッセージがガンバを変えていったのだ。3大タイトル優勝4回、ACL優勝1回、クラブW杯3位の実績は、長期政権を築けたことだけが理由ではない。
ヴィッセルにも、潜在能力の高いタレントが揃う。ザックの日本代表には伊野波雅彦が選出されており、大久保嘉人、野沢拓也、田代有三らの代表経験者が名を連ねる。下部組織出身の小川慶治朗は、将来性豊かな19歳だ。
タレントの質は、上位陣にも見劣りしない。
現在のヴィッセルは、かつて監督を務めたレイソルやガンバに似た状況にある。それもまた、西野の気持ちを熱くさせた理由のはずだ。