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ヴィッセル神戸・西野朗新監督の野望。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byKyodo News
posted2012/05/21 11:35
ヴィッセル神戸のオーナー三木谷浩史氏は、西野朗新監督を迎えるにあたって「ACLに出場して優勝するということを目指しています」と改めて強調。西野監督はヴィッセルの弱点として「アタッキングサードのクオリティや、自陣のディフェンスゾーンでのウィークポイントがあるようだ」とコメントした。
ゆったりとしたオーラが、記者会見場を駆け抜ける。濃紺のスーツにノーネクタイは、ガンバ大阪のゲームでお馴染みだ。
J1リーグ第12節が行なわれた5月19日夜、西野朗のヴィッセル神戸監督就任が発表された。シーズン途中の指揮官交代は、ガンバ大阪の松波正信、川崎フロンターレの風間八宏両監督に続いて3人目である。
4月30日に和田昌裕監督を解任したヴィッセルは、安達亮ヘッドコーチを暫定監督に据えながら後任人事に着手していた。クラブのフロントは、「上昇すれば安達コーチが続けることもある」と含みを持たせたが、その後も復調の兆しは見えてこない。「今年はACL出場を目指している」(三木谷浩史会長)だけに、新監督の招聘が急がれていた。
「自分自身も強烈に意識した」レッズには素直に行けなかった。
西野にとっても待ち望んだオファーだった。
ガンバ大阪を率いていた昨シーズン終了直後、彼は浦和レッズから新監督就任を打診されている。現場志向は強いだけに、新シーズンもピッチに立ちたいとの思いは湧き上がった。しかし、「あの瞬間は踏み込めなかった」という。
「ナショナルダービーとも言われた相手で、自分自身も強烈に意識したチームへ、すっとスライドしていくことは、どうしても考えられなかった。気持ちを切り替える時間的猶予もなく、受け入れられない自分がいた」
その後もいくつかのアプローチがあった。「国外からもリサーチを受けた」と話すが、正式なオファーには至らなかった。西野が言う「国外」とは、このところ話題の中国リーグのクラブだったと見られている。
メディアからの誘いも絶えなかった。解説や講演の依頼が殺到するが、ほとんどすべてを断ってきた。すぐにでもチームを率いたいという意欲が、胸の奥から絶えず突き上げていたからだった。
「みなさん、ご無沙汰しています」と切り出した記者会見では、「自由がこんなに苦しいとは思わなかった」と苦笑いを浮かべた。