オリンピックへの道BACK NUMBER
男子卓球で20年ぶりに高校生代表。
丹羽孝希が五輪初メダルの切り札に!
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2012/05/04 08:00
昨年の世界ジュニア選手権大会シングルス優勝、今年に入ってからも全日本卓球選手権大会のジュニア男子部門で3連覇を達成している丹羽孝希。得意技は「チキータ(バックハンドでの攻撃的レシーブ)」。
4月19日から22日まで行なわれていた卓球のロンドン五輪アジア予選で、男子の丹羽孝希、女子の平野早矢香がオリンピックの出場枠を獲得した。
昨年5月の世界ランキングで、男子は水谷隼と岸川聖也、女子は福原愛と石川佳純が、オリンピックでのシングルスの代表となっていた。今回、丹羽と平野が出場枠を得たことで、日本は3人で戦う団体の出場権を得ることになった(丹羽と平野は団体のみの出場となる)。
今回のアジア予選では、大きな成果もあった。丹羽が、世界ランキング1位の馬龍(中国)を破ったのである。
「うれしかったですけれど、今はオリンピックに向けて集中するだけです。今より力をつけて常にリードができるように、練習するだけです」
帰国した丹羽は冷静に振り返るが、日本のエースである水谷はこの4年間で馬龍に7戦全敗だから、その価値は大きい。
20年ぶりの高校生五輪代表が団体戦のジョーカーに。
青森山田高校3年で現在17歳の丹羽は、2009年の世界選手権では日本男子として史上最年少の14歳で代表入りしている。昨年も世界ジュニア選手権シングルスで、日本男子2人目の優勝を果たすなど、将来を嘱望されてきた選手である。
日本男子20年ぶりの高校生での五輪代表である丹羽が武器とするのは、海外の強豪選手も一目置くほどのレベルにあるというバックハンドの攻撃的なレシーブ。馬龍との一戦でも、そのレシーブを中心に組み立てて、勝利をおさめることができた。また、勝負どころでの冷静かつ強気なプレーができることも、丹羽の魅力だ。
当の本人は、リオデジャネイロ五輪を視野に入れていた時期もあったが、「多くの人の期待にこたえるためにもロンドンに出たい」と目標を定め、実現させた。
丹羽のたしかな成長の証明とも言えるが、それは日本男子のロンドン五輪での戦いにとっても大きな意味を持つ。
1988年のソウル五輪で正式種目となってからまだ一度もメダルを手にしていない日本だが、北京五輪から採用された卓球の団体戦こそ表彰台に最も近いと言われている。
事実、世界選手権では男子が3大会連続で銅メダルを獲得しているし、女子も今年3月のドルトムント大会でこそ準々決勝で敗退したが、それまでは5大会連続で銅メダルを得ていた。
それだけに、ロンドン五輪でも団体への期待は高まる。