オリンピックへの道BACK NUMBER
執念で出場権を掴んだシンクロ団体。
ロンドンの舞台でお家芸復活かける!
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2012/05/05 08:01
乾友紀子、酒井麻里子、小林千紗、足立夢実、箱山愛香、中村麻衣、三井梨紗子、糸山真与、吉田胡桃の9人が代表メンバーとなった、シンクロ女子・ロンドン五輪代表。平均年齢21歳、下は18歳から上は24歳までのメンバーで、見事に5大会連続五輪出場を果たした。
4月18日から22日にかけて、シンクロナイズドスイミングのロンドン五輪世界最終予選がロンドンで行なわれた。日本はデュエットで4位、チームで3位となり、オリンピック出場権を獲得した。
1984年に五輪正式種目となって以来、実施されたすべての種目で出場してきたが、その伝統を守ったことになる。とりわけ今回の最終予選を前に、チームの出場争いで厳しい戦いが予想されていた中での出場権だ。
「全員が絶対に勝つ執念を持ち続けたことがつながりました」
大会を振り返っての、主将の小林千紗のコメントである。
シンクロナイズドスイミングは、2008年の北京五輪のチームこそ5位でメダルを逃したものの、他の大会のあらゆる種目でメダルを獲得し、新しいお家芸とも言われるほど、世界のトップクラスの地位を占めてきた。
なのに今回、出場権の確保に危機感があったのは、ひとつには出場権獲得の仕組みにある。
実質1枚の切符をめぐる厳しい戦いを勝ち抜いた日本。
シンクロナイズドスイミングのチームの出場国は8カ国。5つの大陸それぞれに1枠が振り分けられ、残りの3枠を最終予選で競う形式だ。アジアの枠は、昨年の世界選手権の成績にかかっていたが、日本はデュエット、チームともに5位。両種目で銀メダルを獲得した中国におよばず、最終予選にまわることになった。デュエットについては、最終予選で上位19組に与えられることになっていたから、まず問題はないと考えられたが、問題は3枠のチームだった。
シンクロナイズドスイミングは、他の競技でよく見られるように、開催国枠が別に設けられているわけではない。そのため、イギリスはヨーロッパの大陸枠を使用してオリンピックに出場する。それが最終予選の争いを激しくする要因となったのだ。
ヨーロッパの大陸枠はイギリスのものであるため、自動的に、2000年のシドニー五輪以降、デュエット、チームともにすべて金メダルのロシア、北京五輪で両種目銀メダルのスペインが世界最終予選に押し出されることになった。両国の実力を考えれば、ロシアとスペインが、1、2位を占めるのは確実と見られていた。つまり、実質1枚の切符しかなかったのだ。