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松井秀喜への“投資”の見返りは!?
レイズの「ウォール街」流球団経営。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2012/05/02 10:30
「やるべきことをやって待つだけです」と語って、ひとりニューヨークで猛練習を重ねていた松井秀喜選手。レイズは、2008年にはリーグ初優勝を果たし、その後も4年間で地区優勝2回となかなかの強豪チーム。松井は、まずはマイナーで調整して、シーズン中の昇格を狙うことになる。
MLBならではの、FAとドラフトを巡るルールを活用。
レイズが採用し、成功した方針はふたつある。
(1) FAになった選手は追わず、その補償として得られるドラフト指名権を活用する。
(2) 中心選手であっても「売り時」と判断すれば、ためらうことなく若手有望選手と交換する。
メジャーリーグでは、FAを使って選手が移籍した場合、所属していた球団はその補填としてその選手の成績によってドラフトの指名権が得られる(日本も同じような制度を導入してもらいたい)。
レイズの場合、2011年のドラフトでは上位60人の指名選手のうち、実に10人も指名している。いかにドラフトを重視しているかがこの数字からも分かる。
ドラフト重視の強化が成功し、最下位常連の汚名返上。
今季、レイズの核となっているのは、ドラフト1巡目で指名された選手たちが多い。
三塁手のエバン・ロンゴリア(2006年)、エースのデビッド・プライス(2007年)と数年前に獲得した選手たちが順調に成長し(育成システムが機能している証拠)、期待通りの活躍を見せている。
かつては最下位ばかりだったレイズが強豪となったのは、球団に明確な強化方針があったからだ。
そのあたりの事情については、経済&スポーツジャーナリストのジョナ・ケリが書いた『The Extra 2%』に詳しい。知的興奮を呼び醒ます好著だ。
ただ、レイズは若手に頼っているばかりではない。FAになり格安で市場に出回っているベテラン選手を獲得することも厭わない。