MLB東奔西走BACK NUMBER
注目すべきは“YU”だけじゃない!
チェンが見せるNPB仕込みの投球術。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2012/04/30 08:01
4月17日のホワイトソックス戦で初勝利を上げたオリオールズのチェン・ウェイン投手。続く、22日のエンゼルス戦でも6回1/3を投げ5安打1失点と好投し、自身に勝ちはつかなかったがチームの勝利に貢献した。
日を追うごとに日本人メジャー選手の話題は、ダルビッシュ有投手一色になってきた。
登板を重ね、徐々に本領を発揮しはじめている。4月24日のヤンキース戦では完封こそ逃したものの、強豪打線を相手に9回途中まで無失点に抑える好投を演じた。これで早くも3勝目。その噂通りの圧倒的な投球に、地元ファンのダルビッシュ人気は加熱の一途を辿っている。
その一方で、大々的に取り上げられてはいないが、ダルビッシュ同様に開幕からなかなか良い投球を披露している投手がいる。
昨年まで中日に在籍し、メジャー挑戦1年目、オリオールズのチェン・ウェイン投手だ。まずは開幕から3試合まで、2投手の投球内容を比較する表をご覧頂きたい。
登板日 | 対戦相手 (チーム打率順位) |
投球 回数 |
被安打 | 失点 | 自責点 | 三振 | 四死球 | 球数 (ストライク) |
WHIP |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
4月9日 | マリナーズ(13位) | 5.2 | 8 | 5 | 5 | 5 | 5 | 110(59) | 2.12 |
4月14日 | ツインズ(5位) | 5.2 | 9 | 2 | 1 | 4 | 5 | 102(60) | 2.21 |
4月19日 | タイガース(10位) | 6.1 | 2 | 1 | 1 | 5 | 5 | 121(70) | 1.81 |
登板日 | 対戦相手 (チーム打率順位) |
投球 回数 |
被安打 | 失点 | 自責点 | 三振 | 四死球 | 球数 (ストライク) |
WHIP |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
4月10日 | ヤンキース(2位) | 5.2 | 7 | 4 | 2 | 6 | 2 | 101(59) | 1.41 |
4月17日 | ホワイトソックス(7位) | 5.1 | 6 | 2 | 2 | 4 | 2 | 99(64) | 1.45 |
4月22日 | エンゼルス(4位) | 6.1 | 5 | 1 | 1 | 5 | 3 | 96(58) | 1.38 |
それぞれの数字を比較してもらえば一目瞭然だが、ほぼダルビッシュと変わらない投球をしているのがわかるだろう。むしろ、与四死球やWHIP(1イニング当たりの被安打数+与四球の平均)においては数字が低く、ダルビッシュを上回る安定感を持っている。
予想以上に冷ややかだった、地元のメディアとファン。
けれども人気と注目度という点では、元NPB選手とはいえ台湾出身のチェンがダルビッシュを抜くのは厳しいだろう。
さすがに、オリオールズの地元ファンからは多少なりとも関心を持たれているだろうと思っていたのだが、予想外に冷ややかだった。
彼のデビュー戦となった4月10日のヤンキース戦。人気チームとの対戦にもかかわらず空席が目立ち、観客数は2万5000人にも満たなかった。もちろんチェンを応援するようなプラカードなどは一切無し。唯一現場で盛り上がっていたのは試合を生中継していた台湾系のメディアぐらいであった。