Jリーグ観察記BACK NUMBER
セレッソのピッチを“劇場”に変える、
ソアレス監督のパフォーマンスと情熱。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byMasahiro Ura
posted2012/03/27 10:30
試合中に大きな身振り手振りを交えて、タッチライン際で選手に指示を与えるセレッソ大阪のソアレス監督。現役時代のポジションはミッドフィルダー。Jリーグには1996年、京都パープルサンガ(現・京都サンガ)時代に22試合に出場している。
「監督のベンチ前のパフォーマンス」と言えば、レアル・マドリーのモウリーニョ監督やドルトムントのクロップ監督が有名だろう。ボディーランゲージを交えて感情を豊かに表現し、ライン際から選手の闘志に火をつけるだけでなく、サポーターにとっては観戦の見所にもなっている。パフォーマンス力は、現代サッカーの監督に必要とされる能力のひとつと言ってもいいかもしれない。
そんなパフォーマンス力を持つ監督が、今季のJリーグに現れた。セレッソ大阪の新監督に就任したブラジル人のセルジオ・ソアレスだ。
たとえば第3節の川崎フロンターレ戦。雨が降っていたにもかかわらず、ソアレス監督は90分間ずっとライン際に立ち続けて声を張り上げていた。
前半のロスタイムに清武弘嗣からのパスをキム・ボギョンがその場でシュートしたときは飛び上がって悔しがり、手でジグザクと波線を描くジェスチャーとともに「そこはドリブルで切れ込んでからシュートだ!」というメッセージを伝えた。守備から攻撃へ切り替わるたびに「押し上げろ!」とばかりに手を左右に振る。CKのたびに清武弘嗣、キム・ボギョン、ブランキーニョの3人に前線に残ってカウンターを狙うように大声で確認。まさに“劇場型監督”だ。
無名ながらも“当たり”の監督を発掘する選考規準は?
もちろん派手なのはパフォーマンスだけではない。きちんと結果もともなっている。
第3節の川崎戦では1対0で競り勝ち、これで開幕から2勝1分で4位に浮上。昨季まで5年間率いたレヴィー・クルピ監督からの移行が心配されたが、新監督の情熱に後押しされるかのように好スタートを切ることに成功した。
今季、ガンバ大阪のジョゼ・カルロス・セホーン新監督が1勝もできずに解任されたように、外国からJリーグを率いた経験のない指揮官を連れてくるのには大きなリスクが伴う。ソアレスは選手として1996年に京都パープルサンガ(現・京都サンガ)でプレーしたことがあるものの、監督としての実績はブラジル国内に限られており、日本ではほぼ無名の指揮官だ。いったいセレッソはどうやって“間違いのない監督”をブラジルから発掘することができたのだろうか?