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「勝負の年」となるF1参戦3年目。
小林可夢偉が挑む新しいステージ。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byREUTERS/AFLO
posted2012/02/24 10:30
ザウバーの2012年型マシン「C31/Ferrari」を前にしたドライバーの小林可夢偉とセルジオ・ペレス。同じチームでF1参戦3年目となる可夢偉は、間違いなく今季が勝負どころとなる
「運転を変えていかないといけない」ことを学んだ。
準備期間が十分に取れなかったピレリは安全性を保つために構造を極端に硬くしたタイヤを設計した。
そのため、タイヤのグリップはゴム(コンパウンド)の軟らかさだけで受け止めるしかなく、ゴムが異常に摩耗し、パフォーマンス劣化が激しいタイヤとなった。このタイヤが、可夢偉のドライビングスタイルに合わなかった。
「ブレーキングでフロントタイヤに荷重をかけて曲がろうとするドライビングスタイルの人は、去年みんなハマったと思う」
昨年シンガポールGPの予選でクラッシュしたシケインは、フロントタイヤで踏ん張ろうとするドライバーがブレーキングで罠に落ちやすい場所だった。
「2011年に学んだもっとも大きなことは、毎年、運転を変えていかないといけないっていうこと」
もちろん、ピレリを履き始めて、これまでのドライビングスタイルでは対応できないと感じていた可夢偉は、シーズン中にも何度かスタイルを変えようとしていた。しかし、クルマの運転はドライビングスタイルだけで変えられるほど単純ではなく、それに合わせたマシンのセットアップが必要となる。
より高いレベルを目指すためにも引き出しを増やす。
「でも、シーズン中は、グランプリを戦うだけで精一杯で、タイヤに合わせたセットアップまで手がつけられなかった。だから、ウインターテストではそういう部分でいろんなことを試していきながら、ドライビングもそれに合わせて変えていきたい」
ドライビングスタイルとは、ドライバーにとってアイデンティティそのものである。それを変えるのは、容易なことではない。
「これまでは、そんなこと考えてもいなかった。自然体で走っていても、それなりに結果は出ていたから。でも、これからはどんなクルマ、どんなタイヤで走っても、それなりにうまく運転するためには、ドライビングスタイルをいくつか持っていたほうがいい。ドライバーとして、さらに高いレベルを目指したいですから」
「勝負の年」と自らが語る可夢偉。その中には、2013年以降にトップチームへ行くための「勝負」も含まれているのかもしれない。