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F1界で輝き続ける日本人たち。
今井、松崎の“with the team”精神。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2012/02/13 10:30
昨シーズン後半、マクラーレンの巻き返しの立役者として一躍有名になった今井弘プリンシパルエンジニア。ピレリタイヤの難しい特性を見事解明して、すぐさまレースにフィードバックさせた
ミシュランとの過酷なタイヤ戦争で活躍した日本人たち。
松崎は、ブリヂストンがF1参戦に向けて本格的な準備を始めた1996年からモータースポーツ部門に従事してきた。ミシュランとのタイヤ戦争が激化していた最後の2年はフェラーリ担当として、ワンメイクとなった'07年からはブリヂストンのチーフエンジニアとして、F1チームとともに仕事を行ってきた。ブリヂストンがF1から撤退した昨年、フォース・インディアに移籍。コンストラクターズ選手権はチーム創設以来、最高位となる6位獲得に貢献した。
タイヤの性能を極限まで引き出す専門家の重要性。
タイヤは路面に接地している唯一のパーツ。エンジンの馬力も、洗練されたエアロダイナミクスで作り出したダウンフォースも、ドライバーの類い希なるアクセルワークも、すべてはタイヤを介して地面に伝えられる。タイヤ戦争を繰り広げていたころは、高性能のタイヤが次々と開発され、クルマやドライバーのパフォーマンスを補ってくれていたケースも少なくなかった。
ところが、'07年からはタイヤ供給は1社だけとなり、現在のF1はタイヤの性能をいかに引き出すかが勝負を分けるポイントとなっている。しかし、F1のチームにはタイヤ専門のエンジニアがいない。タイヤメーカーのエンジニアだった浜島、今井、松崎が、タイヤがワンメイクとなった'07年以降に、次々にF1チームにヘッドハンティングされているのも、そんな背景が関係している。
チームと積極的な関係を築いていたブリヂストン。
しかし、上記の3人がF1チームに引き抜かれたのは、彼らが単にタイヤメーカーのエンジニアだったことだけが理由ではない。それはブリヂストンとともにF1を戦ってきたグッドイヤーやミシュランのエンジニアが、現在のF1に存在していないことからもわかる。その理由を浜島は次のように語る。
「私たちはブリヂストン時代に、to the team、for the team、そしてwith the teamという精神で、チームとともに仕事をしてきたからではないでしょうか」