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闘莉王去って「理詰め」が残った。
浦和に見えてきたフィンケイズム。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byUra Masahiro

posted2010/04/09 10:30

闘莉王去って「理詰め」が残った。浦和に見えてきたフィンケイズム。<Number Web> photograph by Ura Masahiro

昨季は怪我の影響もありリーグ戦15試合出場無得点にとどまった田中達也だが、今季は開幕から全5試合に出場1得点。チームも3勝1敗1分けで4位につけている

チーム全体に浸透してきたフィンケ監督のコンセプト。

 一方、選手の入れ替わりの問題とは別に、フィンケ監督就任から1年が経ち、継続してチーム作りを進めてきたことが報われ始めている。

 フィンケ監督は就任以来、「ショート・ショート・ロング」をパスまわしのキーワードにしてきた。ボール保持者のまわりに数的有利を作り、相手を引きつけておいて逆サイドにロングパスを出すというコンセプトである。これを浸透させるために、ハンドボールのように手でパスをつなぐトレーニングを取り入れてきた。

 別の表現に言い換えると、攻撃のとき、「ボール保持者に近づく人」と「ボール保持者から遠ざかる人」が同時にいる状態を、常に作るということだ。

 湘南戦で田中達也がPKを獲得したシーンでは、阿部がボール保持者(田中)に近づき、一方でエジミウソンとポンテがボール保持者から遠ざかるようにゴール前に走りこんでいた。もし田中が倒されていなくても、ビッグチャンスになっていただろう。

浦和の「理詰め」のサッカーに欠けているものとは?

 今季の浦和を観ていると、守備においても、攻撃においても、「理詰め」で組織作りを進めていることを感じさせてくれる。戦術好きなサッカーファンにとって、一見の価値のあるチームになりつつある。

 ただし、チャンスをゴールに結びつける「決定力」という意味では、まだまだ課題が残されている。

 湘南戦では再三チャンスを作りながら、結局、2点しか決められなかった。もう一段階上のチームになるためには、もっと“チャンス効率”を上げなければいけないだろう。

 では、どうすればいいか?

 理詰めで崩す戦術を採用しているからこそ、最後にひとつ「欺き」や「騙し」があると、さらにゴールが生まれやすくなるのではないか、と筆者は考えている。

 たとえば昨年9月のオランダ対日本戦で、ファンペルシが先制点を決めたシーンを例にしよう。ファンペルシはサイドからのパスを胸でトラップするときに、うまく背中を使って、長友佑都からボールを隠してしまった。つまり、長友の視界から一瞬ボールが消えたのである。ファンペルシは素早く反転して、シュートをネットに突き刺した。オランダはペナルティボックス内に入ると、常に相手を欺こうとしている。

 昨季の浦和において、そういうアドリブ的な意外性のあるプレーは、ある意味、闘莉王が担っていた。闘莉王のオーバーラップは、味方をも騙して、相手ゴール前でサプライズをもたらしていたからだ。闘莉王がいなくなったことで失われた「意外性」を、田中や柏木陽介が担わなければいけない。

 とにかくようやくフィンケ流の「理詰め」のサッカーが、カタチになり始めた。広島とも、ガンバ大阪とも、FC東京とも違うパスサッカーがJリーグに生まれようとしている。

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