プロ野球亭日乗BACK NUMBER
プロ野球のビデオ判定スタート。
審判の権威が崩れ始めている!
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/04/06 10:30
巨人・ヤクルト2回戦、9回表ヤクルトのガイエルがセンターオーバーの打球を放ち二塁で止まるも、飯田コーチが右手を回しアピール。名幸一塁塁審はフェンスの上部に当たったとインプレーの判定をしたが、責任審判員の森二塁塁審(中央)がビデオ判定を採用。フェンスを越えたとして判定がホームランに変更された
ビデオ判定したが、結局ビデオが役立たずという事態も。
3月28日の阪神・横浜戦(京セラドーム)で横浜・カスティーヨの右翼への打球をビデオ判定とした友寄審判は「他の審判は(フェンスを)越えていないと判断したが、僕だけ気になったので……」とコメント。結果的には球場のビデオ施設や機材の問題などで、ビデオを見ても判断がつかず、当初の判定どおりに二塁打となるという事件も起きた。
ほぼ全員がフェンス直撃と判定しているのに、責任審判の友寄審判が「気になった」ということでビデオに頼り、しかもビデオは役立たず。審判団の間でも、相互の判定に不信感があるということを“自首”するという、酷い結果だけが残ってしまった。
そこで思ったのは、NFLで採用されているチャレンジシステムだった。
チーム側がビデオ判定を要求するNFLのシステムが有効?
NFLでは1試合で2度、得点やターンオーバーなど勝敗に関わるプレーに関して、審判にビデオチェックを要求できる制度がある。両チームのヘッドコーチに「チャレンジ」をコールできる権利はあるが、その代わり、もし判定が覆らなければタイムアウトを1回ずつ没収されるというリスクも背負う。
野球でも判定を下した審判ではなく、あくまで利害のある監督から要請を受けて、初めてビデオでの再チェックが行なわれる方が、道理ではないだろうか。しかも、その要求にはある程度のリスクを背負わせる。野球の場合にはリスクのとり方が難しいが、例えばその後15試合なり、20試合は請求権を失うなどということもありだろう。
ちょっと前にメジャーではクロスプレーの映像を球場のビジョンで流したら、審判団が「我々を愚弄する行為だ!」と激怒して全員、引き上げてしまったという事件があった。
権威とはしょせん虚構なのだ。虚構だから、強い意思を持って、時には強硬手段に訴えてでも守っていかなければならない。その強さがなくなれば、権威はいずれ崩壊してしまう。
ビデオ判定を導入した今こそ、審判団は自らに自信を持って、手を上げて欲しい。自らのジャッジが最終のものであるという強い意志があって初めて、審判の権威とは維持できるものではないだろうか。