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Jリーグが進歩するために学ぶべき、
世界最高のコンディショニング理論。
~【第1回】 バルサも採用するPTP~ 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byJ-Dream

posted2012/01/01 08:01

Jリーグが進歩するために学ぶべき、世界最高のコンディショニング理論。~【第1回】 バルサも採用するPTP~<Number Web> photograph by J-Dream

ヒディンクの右腕として、2002年韓国代表の肉体改造に取り組んだレイモンド・フェルハイエン。今回、サッカーを通じたオランダと日本の国際交流に努める『J-Dream』主催で行なわれたセミナーの講師として来日。来年も今回同様のイントロダクションセミナーと、今回の参加者を対象としたアドバンスセミナーを開催予定だという

サッカーに必要なのは素早く筋肉を回復させる能力だ。

 レイモンドはこう説明する。

「マラソンや持久力のスポーツは、酸素を使ってエネルギーを生み出している。だが、サッカーは瞬間的なアクションが多く、主に筋肉の状態を回復させるために酸素を使っているんだ。酸素の使い方がまったく違う。だから、サッカー選手に対して、長く持久的なトレーニングをさせることは意味がない。逆に速筋が減ってしまうと言えるくらいだ。サッカーにおいて重要なのは、回復のスピードを鍛えることなんだ」

 また、練習量が少ないのも特徴のひとつだ。「能力の限界を少しだけ超えた、101%の状態で練習する」(オーバーロード・トレーニング)という概念が根底にあり、疲れているときに練習しても能力は伸びないと考えている。

従来の理論には、サッカー固有の分析が欠けていた。

 レイモンドは18歳のときにケガをし、プロサッカー選手になる道を諦めなければいけなかった。だが、その後大学に進み、スポーツ生理学を専攻したことで、サッカーを科学的手法で分解し、再構成するという新たな分野を作り出した。

 レイモンドは言う。

「これまでのコンディショニング理論には、サッカーを正しく分析するということが欠けていた。サッカーにどんな場面があり、どんな動きが必要かを考えれば、自ずとやらなければいけないことが見えてくる」

 12月に開催されたクラブW杯において、バルセロナは圧倒的な攻撃力でタイトルを手にした。狭いエリアのプレーをまったく苦にせず、メッシのドリブルやシャビのパスといった技術面が大きな注目を集めた。だが同時に、強行日程にもかかわらず、いつものように爆発的なスプリントを続けられていたことも見落としてはいけないだろう。バルセロナのプレーを理解するためにも、この新たなコンディショニング理論を知ることには大きな意味がある。

 レイモンドは韓国やロシアにどんな魔法をかけたのか? オーバーロード・トレーニングとは何か? 世界最先端のコンディショニング理論の扉を開けたい。

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レイモンド・フェルハイエンRaymond Verheijen

1971年11月23日アムステルダム生まれ。10代の頃はプロのサッカー選手を目指すが、怪我で断念。後に、サッカーのトレーニング理論・医療研究で有名なアムステルダム自由大学、リバプール・ジョン・ムーア大学で学ぶ。オランダに帰国後は、母校及び王立オランダサッカー協会で研究を続け、その成果は『ネイチャー』誌にも発表された。90年代後半には、EURO2000に向けてオランダ代表チームのフランク・ライカールト監督の下で、サッカーの「ピリオダイゼーション」を指導。以降、韓国(W杯ベスト4)、ロシア(EUROベスト4)、ウェールズなどの代表チーム、クラブではバルセロナ(欧州CL優勝)やゼニト(UEFAカップ優勝)でその手腕を発揮。2008年には「レイモンド・フェルハイエン・コーチング」という会社を設立し、「ピリオダイゼーション」を世界中で指導し続けている。

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