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岡田&尾花両監督の采配に、
チームの新しい風を感じた時。 

text by

氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

PROFILE

photograph byTamon Matsuzono

posted2010/03/31 12:50

岡田&尾花両監督の采配に、チームの新しい風を感じた時。<Number Web> photograph by Tamon Matsuzono

尾花監督は過去の栄光を追わず新たな道を模索した。

 阪神キラーと呼ばれていた三浦大輔が本来の調子ではないことを理由に、開幕2軍スタート。弱小チームの悪しき慣習として、過去の実績や栄光にすがりつくというのがある。だが、尾花新監督はそこに固執することなく、新たな道を模索した。

 とにかく、尾花監督は投手陣の起用に関しては厳しいとの印象だった。

 開幕投手はランドルフ。昨シーズン、途中入団した助っ人だが、防御率は良かったものの四球の多さが目立った投手だった。試合もその不安要素が露呈するような展開で、2点のアドバンテージも四球から崩れ、阪神打線の集中砲火を浴びてしまう。

 4回裏、鳥谷に四球を出し、金本、新井、城島と連打を浴びて同点にされると、8番・桜井に勝ち越し弾を浴びた。一気に5失点。このイニングを終え、尾花監督はランドルフをあきらめた。

さっそく見えてきた“尾花再生工場”の兆しだが……。

 しかし、この後の投手起用が実に面白かった。追いつきたい横浜と突き放したい阪神と、次の得点をどちらが先に奪うかのつばぜり合いが始まった時のことだ。

 6回裏、阪神は城島、ブラゼルの連打で出塁。桜井は三振に倒れるが、1死・一、三塁の好機をつかむと、9番・投手筒井に代打・桧山を送る。すると、尾花監督は即座に反応して、左腕の高宮を投入した。阪神・真弓監督はさらに矢野を送ったが、それも尾花監督は想定内だったという。

 '05年の希望枠で獲得した高宮はコントロールに優れる技巧派左腕だが、今までこれといった活躍がなかった。昨シーズンからサイドスローに転向していたが、尾花采配で生きる道を見つけた。

 高宮は右打者の矢野に対して、インコース低目にスライダーをきっちりと決め、三振を奪い役目を全うする。ここで、また尾花監督は動き、続くマートンの打席では高宮に代えて木塚を投入。ショートゴロに抑えて、この窮地を脱した。

 どうしても1点をやりたくないという意思の感じとれる采配だった。

 しかし、7回裏は2失点。回の頭から登板した加藤がピンチをまねき、5番・新井を迎えたところで真田が登板。セカンドゴロに打ち取るも、二塁手・カスティーヨがジャッグルし、二、三塁に走者を残すと、城島にタイムリーを浴びた。

敗戦の弁でさえも、一本筋が通っていた尾花監督。

 試合後、淡々と試合を振り返った尾花監督からは投手起用への厳しさが聞き取れた。

 先発・ランドルフについて。

「ノーアウトから四球で走者を出すというのは試合の雰囲気を悪くさせる。鳥谷にはホームランを打たれても、同点ではなかったんだから。あれが今日の試合で一番良くなかった」

 継投策について。

「継投策はもう1点もやれないということ。矢野の代打は想定内で高宮がしっかり投げた。最後は踏ん張りきれなかったが、先発投手が早くに崩れると、どうしてもこういう展開になるもの」

 勝利への厳しさがあるのと同時に、勝ちに結び付けていくための哲学が尾花監督の中にあると、その起用法と試合後のコメントから感じたものだ。「継投についてはシーズンの中で戦いながら見極めていく」ともいった新監督。その采配には、これからもっと尾花色が出てくるのだろう。

 2戦目は延長11回にサヨナラ負けを喫したが、阪神打線を少ない点数に抑え、3戦目では2失点で初勝利を挙げた。小刻みな継投が光っての初勝利だった。

【次ページ】 新しい風が吹く両チームに、勝利の女神は微笑むか!?

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