野球善哉BACK NUMBER
岡田&尾花両監督の采配に、
チームの新しい風を感じた時。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byTamon Matsuzono
posted2010/03/31 12:50
昨季、両リーグの最下位に沈んだ2チームの開幕戦を見た。
オリックスと横浜である。
ともに、他チームで優勝を経験した監督・コーチを新監督に招聘し、新たな船出を期待する両チームだ。
「岡田くんを連れてきたくらいやから、それくらい球団も変わろうとしているんやと思う。温かく応援してやってよ」
1989年からスカウト・編成としてオリックスに在籍し、昨年限りで現場を退いた堀井和人さんは、引退を前にそう語っていた。
オリックスが本気で変わろうとしている。
そもそも、オリックスはそれほど弱いチームではない。一昨年は若手投手陣をバックに2位になっている。トップバッターを務める坂口智隆を筆頭にピークに向かっている若手が多く、金子千尋、小松聖、近藤一樹、平野佳寿、大引啓次、T-岡田ら将来有望な選手たちのイキが良いのだ。戦略家として知られる岡田彰布新監督によって、活かされるのではないかという期待感が大きくある。
試合前からガラッと雰囲気が変わっていたオリックス。
開幕は楽天戦。
試合開始前、去年には見られなかった光景がオリックスのベンチ裏にはあった。坂口や大引ら主力選手たちが資料とペンを携えて、ミーティングルームへと向かっていたのだ。対戦相手の対策のためだろう。
試合は開幕投手に抜擢された金子が、球界を代表する投手でもある楽天・岩隈と互角にわたり合う投手戦を演じる。3回裏に、昨季、岩隈に無安打だった大引がタイムリーを放ち先制すると、この1点を守りきった。大げさにいえば、金子が岩隈に投げ勝ったのだ。
試合後、岡田節が炸裂していた。
雑談のように柔和な雰囲気で行われる彼の会見は記者の間でもすこぶる評判がいい。
「そら、打ってくれることにこしたことはないけど、こういう投げ合いのゲームの中でどう感じてゲームをするかやろ。大引のタイムリーの場面はスクイズも考えたけど、開幕戦でそれはかわいそうやろうと思ったからな。一番いいゲームができたんちゃうかなぁ」
肝を据えて戦った岡田監督に、選手たちが気持ちで応えた!
岡田監督の代名詞といえば絶妙な継投策だが、それにおいても「球数も少なかったし、こういうゲームはどっしりしとかなアカン。こういう試合をどれだけ拾えるかやから」と独自の理論を展開していた。
肚を据えて戦った指揮官の姿に、選手が躍動してつかんだ開幕白星だった。
この勝利を弾みにオリックスは開幕4連勝を飾る。2戦目は小刻みな継投を駆使し、岡田采配らしさを見せたかと思えば、3戦目は先発ローテーションの岸田がロングリリーフで相手打線を抑え、勝利を収めた。
横浜は阪神との開幕戦を迎えていた。