野球善哉BACK NUMBER
センバツ屈指の3人のエース。
一二三、島袋、伊藤の評価が変わる?
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/03/30 19:45
今日でベスト8が出そろい、センバツはいよいよ佳境を迎えることとなった。
センバツというと、年が明けて初めての高校野球の全国大会となるために、その戦い方には未知数な部分が多い。試合勘の鈍りもあれば、この冬の間に故障したり、またフォーム改造がうまくいかないままに大会を迎えてしまった選手も多くいる。
「今年、初めての大会だから始まってみないと分からない。期待と不安の中で初戦を迎えている」
名監督として知られる、智弁和歌山・高嶋仁監督、帝京・前田三夫監督の両者が異口同音に発したセリフである。地元の近畿勢が2回戦までにすべて姿を消すという27年ぶりの珍事が起きるなど、やはり何があるか分からないのが、センバツなのである。
ここまでの戦いを、大会前から注目していた選手を中心にレポートしてみたい。
絶妙なコントロールを誇った一二三投手だったが……。
大会注目度No.1は東海大相模・一二三慎太(ひふみ しんた)投手。大会前に発売された専門誌2誌が表紙に彼を起用するなど、その注目の高さがうかがえた。
しかし、初戦となった1回戦・初出場校の自由ケ丘(福岡)に敗退。
初出場校といっても自由ヶ丘は、柳川高時代に甲子園出場7回という経験を誇る末次秀樹監督に率いられた実力派の新興勢力である。2年連続で優勝旗を持ち帰っている九州地区ベスト4の実力は侮れるものではなかった。序盤から1点を巡るようなしのぎ合いをするゲーム展開から5回には追いつかれ、ついに8回に勝ちこされることとなった。
一二三の真骨頂はそのボールの球質だけではない。同じストレートでもストライクに入れるのか、それともボール一個分だけ外すのかという絶妙な投げ分けを得意としていた。昨秋はそうして地区大会の優勝校が集まる明治神宮大会を準優勝になるまで投げ抜いてきたのだが、今大会はそういう絶妙なコントロールが見られず、ほとんどがストライクかハッキリ分かるボールとなっていた。
「余裕がなかったのかも知れない」と東海大相模・門馬監督が語り、ボールを受ける捕手・大城卓三も「ボール球を有効に使いたかったのですが……」と悔しがった。
もっとも、そうなってしまった理由には彼の投球フォームにもある。左肩が早くに開いてしまい、ボールがコントロールしにくいフォームになってしまっていたのだ。
これこそ、センバツ初戦の難しさといえるだろう。緊張、力み、プレッシャー。大会注目度No.1投手は、こうして1回戦で大会を去ることになった。
「身体が開いていたのは自分でも分かっていました。それを試合の中で修正できなかった。それが反省点です」
一二三はそう言って反省の弁を述べた。公式戦にならなければ分からない自らの課題を見つけられたことは、彼の野球人生にとっては大きなことだ。大会から彼がいなくなってしまったのは残念だが、甲子園に来るチャンスはまだ1回残っている。