野球善哉BACK NUMBER
来年こそもっとプロアマ交流を!
日本球界が一気に活性化する新提案。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/12/11 08:01
8月4日のプロアマ交流戦。ロッテベンチからプロ選手が見つめるなか、見事な投球を披露した東洋大・藤岡貴裕投手。10月ドラフトでは、藤岡を巡って3球団が競合した末、見事ロッテが1位指名で藤岡投手を引き当て、後に入団も決定している
スカウトは、高校野球の監督とさえ会話をはばかる。
個人的にはプロのスカウトのアドバイスが貴重になってくると思うのだが、今の規則ではそれすら引っ掛かる。スカウトと言ってもプロの一員。指導は許されない。高校の指導者とスカウトが話すのは、交渉過程だけであって、野球談議をしてはいけないという暗黙の了解があるというほどだ。前出のスカウトはいう。
「本当に気を遣います。監督には失礼のないようにという想いがありますから、挨拶はしないといけませんので話をします。けど、あまりに親しくしている姿を見せると、余計な誤解を招く。だから、極力、長時間の話はしないように。特に、甲子園がかかっていたりすると、気を遣いますよね」
そもそもはプロ側の過剰な勧誘合戦が原因なのだから……。
とはいえ、この最大のプロ・アマ問題の課題は、「指導を受ける」ことを規制している日本学生野球協会や日本高校野球連盟の頑なな態度だけにあると決めつけるのは間違っている。
そもそも、この問題の背景にあるのは昭和30年代頃に頻発した、学生の選手に対する行きすぎた勧誘行為が発端となっている。日本学生野球憲章にも<大学生や高校生の中にもプロ野球入団のために中途退学者が増えるなどの事態が生じてきた。(中略)こうした状況の中でプロ・アマ関係は断絶し、昭和40年2月の学生野球憲章改正で、規定がさらに厳しくなった>と解説が記されている。
選手のスカウティングで湧き出た問題とプロが学生を直接指導するというのは別問題のはずだが、プロと学生が関わることが問題視される遠因がプロ側にある以上、プロが学生側に頭を下げることから、この課題に取り組むべきだろう。
規制を緩和すれば、金銭の授受や有望選手の囲い込みを誘発するという声もあるだろう。しかし、考えてみて欲しいのは、技術向上のための指導を規制することに未来があるのかという点である。有望選手獲得のために野球界の発展に背いた愚行こそ、規制・監視すべきであるはずだ。
野球界が一つの方向性を見出し、そこに向かう。今、野球界がやるべきことはその一点にある。