青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER
選手と観客の思いが一体化する、
石川遼が考える理想のコース。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph bySankei/Getty Images
posted2011/11/11 06:02
10月23日のブリヂストンオープン最終日。9番からの3連続バーディでは、すべてのショットをピンそば1mに絡め、ギャラリーの歓声を誘うも、6バーディ、3ボギー、1ダブルボギーの70で回り、通算4アンダー23位タイで大会を終えた
最初は何を言ってるのだろうと思った。
10月中旬に行われたブリヂストンオープンの練習日のこと。ラウンドしながらグリーンで球を転がしてた石川が突然「見えるー?」と大きな声を出した。すると少し離れた場所にいた石川のスタッフが「うーん、ぎりぎり」と返した。
スタッフがいた場所はグリーンの周りにある立ち見スタンド。グリーン面が見えにくい砲台グリーンの不便さを解消するため、急ごしらえで用意されたものらしかった。石川はそこに立ったギャラリーの目線、選手のパットがしっかり見えるかどうかを、自らのラウンドついでに確認していたのだった。
そんなことをする選手はもちろん普通はいない。なんとも珍しいやりとりを見ながら、前週の日本オープン開幕前に石川が話していたことを思い出した。
ギャラリーと喜びを共有する瞬間を石川は考えている。
今年の日本オープンが行われた鷹之台CCは砲台グリーンが多く、ギャラリーゾーンからは背伸びしてもグリーン面が見えないようなホールが多かった。現地観戦する人にとっては決して優しいとはいえないコース。それでもメジャーであり、首都圏での開催。「ギャラリーがたくさん来ると思うけど?」という質問に石川はこう答えたのだった。
「もちろん見に来てくれるのはうれしいけど、ロープの外からカップが見えるホールが何ホールあるのかと思ってしまう。そこは選手としても気になるし、選手のプレーにも影響を与えかねない。プレーが見えないのに『止まってください』と言っても説得力はないし、そういうとこも心配なんです」
選手が意を決して放ったパットがカップに向かって転がっていく。試合の勝敗を、時には人生すら左右する一打。入れ! 入れ! と願う刹那にスリルがあり、決まった瞬間に大きなカタルシスがある。そこには選手とギャラリーの幸せな共有空間があり、ゴルフ観戦の大きな魅力がある。それが味わえないことはギャラリーだけでなく、選手にとってもマイナスになりえるということだ。