濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
F**Kの連呼で毒づくUFCのスター!?
ニック・ディアスの悪態と計算。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2011/11/08 10:30
10月29日、ラスベガスで行なわれた『UFC137』。ニック・ディアス(写真右)はB.J.ペンを金網に追い込み、常に主導権を握っていた。試合は3R、3-0の判定でディアスの勝利。敗れたペンは現役引退を表明した
世界最大にして最高峰のMMA団体であるUFCだが、そこに集まる選手は品行方正なアスリートばかりではない。むしろファイターたちの個性、そのカラフルさが魅力だと言ってもいい。その代表格が、STRIKEFORCEの買収にともなってUFCへの出戻りを果たしたニック・ディアスだ。
彼の名前を日本のファンが初めて意識したのは、おそらく2007年の2月だろう。PRIDEラスベガス大会で五味隆典と対戦したディアスは、フットチョークで一本勝ちし、その実力を知らしめる。ところがその後、アスレチック・コミッションの裁定により結果は無効試合に変更。理由はディアスの禁止薬物使用だった。それもステロイドではなく、マリファナである。
キャッチフレーズは“MMA's No.1 BADASS”。
文字通りのトラブルメーカー。“素行不良”の逸話は数知れない。とりわけ有名なのが、昨年4月のSTRIKEFORCEナッシュビル大会だ。ジェイク・シールズがダン・ヘンダーソンを下すと、次期挑戦権をアピールすべくジェイソン“メイヘム”ミラーがケージに侵入してきた。そこへ割って入ったのが、シールズのセコンドを務めていたディアスだった。いや、正確に言うと割って入ったのではなく、殴りかかったのである。この大会はCBSで地上波生中継されていた。シールズvs.ヘンダーソンはメインイベント。つまり番組のフィナーレで流されたのは、ディアスとミラーの乱闘劇だったことになる。
日本の専門誌は、彼に“暴力柔術”というキャッチフレーズをつけた。アメリカの雑誌でのインタビュー記事につけられたタイトルは『MMA's No.1 BADASS(悪童)』。ページをめくると、彼は闘いに対するスタンスをこんなふうに語っている。
「MMAは洗練されたスポーツなんかじゃないんだ。これはバイオレンスであり、戦争だ」
試合前に“恒例”となっている対戦相手への悪態について聞かれると、舌鋒はさらに鋭くなる。
「(インタビュアーに対し)もし、俺とあんたが闘うことになったら、あんたは俺を殺そうとするだろうし、俺もあんたを殺そうとするだろう。試合が決まったら、俺はあんたを憎む。俺は勝って家族のために金を稼ぎたいんだ。俺の邪魔しようとしやがるヤツは、誰だろうとF**K野郎だ」