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北区赤羽で昭和の哀愁に萌える。
団地から、日本の未来が見えてきた。 

text by

疋田智

疋田智Satoshi Hikita

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photograph bySatoshi Hikita

posted2011/10/28 06:00

北区赤羽で昭和の哀愁に萌える。団地から、日本の未来が見えてきた。<Number Web> photograph by Satoshi Hikita

故郷である宮崎県日南市の懐かしい団地にて。25年ぶりにわざわざ訪ねたおり、記念に撮影したワンカット

高島平団地とまったく同じ問題を抱える現代日本。

 夕暮れになって、ちょっと寒くなってきた。

 ま、10月だからね。でも後で天気予報を聞けば「11月半ばの気温」だったそうだ。

 三田線終点の一つ前、新高島平駅に行ってみる。案内看板を見てみると、おー、すごいね「た」の欄。

 上から、高島高等学校、高島第一小学校、高島第五小学校、高島第三小学校、高島第三中学校、高島第二中学校、高島平くるみ保育園……。

 この地域にはこんなにたくさんの学校があるのだ。かつては、ここでたくさんの子供たち、青少年少女たちが育ち、そして、他の地域へと羽ばたいていったのだ。

 そして、その子供たちがこの場に帰ってくることはなかった。

 結果、ここも高齢化の一途をたどり、今では「都内平均を大きく上回る人口の高齢化、建物の老朽化に見舞われている」という(“高島平再生プロジェクト”より)。

 人口の急減、そして、空室、空き店舗の増加、高齢化に歯止めがかからない。

 一体どうすればいいというのだろう。地元のコミュニティの緊密化? 産業の誘致、創出? 少子化の抑制?

……だが、そのいずれもが難しいのは、高島平が抱える問題のいずれもが、現在日本(特に地方)が抱える問題と同じだからだ。

 軽々に対策が打てるようなものなら、もうとっくにやってるよ。

 やがて、あと10年も経つと、ここは桐ヶ丘のようになる。それはもう抗いがたい事実だ。推測ではなく、未来の現実。

 高島平のおかれた状況は、高度成長、経済大国化、バブル、バブル崩壊、長期不況と、'70年代以降の日本経済のプロセスを、そのまま象徴している。

 日本はこれからどんな国になっていくのだろう。

 このまま長期にわたって衰えていくのかもしれない。そうならないようにしなくては、とはもちろん思うが、人口動態が変わらない限り、どうにも手が打ちにくい。

 団地を考えることは、日本を考えることだ。

 三田線の始点、西高島平駅でBD-1を畳みながら、私はそう考えていた。

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