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かつての“色気”は一体どこへ?
ラグビーW杯に見た、ジャパンの停滞。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byREUTERS/AFLO
posted2011/10/03 10:30
W杯で敗退直後の総括会見にてカーワンHCは「世界に日本のラグビーの成長を見せることはできた」と発言。「このラグビーを続けていけば2019年のW杯日本大会でベスト8に行ける」と語った。それに対し、日本ラグビー協会の矢部達三専務理事が、本大会の結果に対して国民に謝罪。「日本のラグビーはこれから。早急に立て直しを図りたい」とした
対外的なアピールよりも規律を重んじたカーワン政権。
現在のジャパンには、スポーツ専門ではないメディアが注目するようなキャラクターがいない。
今回、プレーで色気を感じさせたのはフランカーのマイケル・リーチ(彼は8年後の日本開催を見据えて、主将にしてもいいのではないか?)と、ウィングの小野澤宏時、カナダ戦の終盤に途中出場して激しいプレーを連発した大野均くらいだった。
この4年間にも魅力のある選手はいた。しかし、いつの間にか消えていった。これはジョン・カーワン・ヘッドコーチの好みが表れている。約束事をきちんとこなせる選手を彼は好んだのだ。
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色気より、規律を彼は好んだ。
それはヘッドコーチのパーソナリティそのものだったように思える。
魅力あるチームでの勝利なくして訴求力は持ち得ない。
9月28日、ジョン・カーワン・ヘッドコーチはオークランド空港近くのホテルで会見を行ったが、こんな言葉を記者団に語っている。
「前回、ジャパンはカナダから引き分けをもぎ取った。今回、われわれは引き分けだったことに失望している。それこそがわれわれの歩みなのだ」
最後の言葉は“That's how far we've come.”である。
これはいろいろな訳し方があると思うが、ここでは柔らかめに「歩み」としたが、意地悪く訳すなら「進歩」としてもいい。同じ引き分けでも、感じ方が違っているのだから、それは進歩なのだ、と意訳できないこともないのだ。
喜びが失意に変わったのが進歩だというなら、それはなんとさびしいことであろうか。
あなたが翻訳者だったら、なんと訳すだろうか?
2019年の日本開催に向けて、2015年のイングランド大会では是が非でも1勝を上げなければならない。
まさに、“Must Win”シチュエーションだ。
さらにはピッチのなかだけではなく、社会的に情報発信力を持つ必要があるだろう。いろいろな人間を巻き込んでいける「戦略家」が必要なのだ。
いま、ジャパンに必要なのは「色気」である。
艶のある監督、個性的なプレーで仲間と観客を鼓舞する選手の登場を切に願う。