ロンドン五輪代表、最大の挑戦BACK NUMBER
攻撃にムラが多かったマレーシア戦。
なぜ五輪代表は大勝できなかった?
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byTakuya Sugiyama
posted2011/09/22 12:15
「勝ててよかったが自分も決めるチャンスがあったのに……決めないとこれから厳しくなる」。決定的なチャンスも含め、幾度もゴールを狙った清武弘嗣
後半の永井謙佑の投入で流れは変わったのだが……。
「攻め手を失ったところで永井クンが入ってきて、やることがハッキリした」
清武の言葉通り、後半14分に永井謙佑が入ると動きが戻り、永井と同じく途中出場の山崎亮平が2点目を奪った。この永井投入がなければ今回も自分たちで流れを変えられず、追加点を奪えないまま緊張した状態で後半のロスタイムを迎えていただろう。
試合後、ボランチの山村和也が「自分がもうちょっと中盤をコントロールしていかないといけないんですけど、ミスが多くてなかなかうまくいかなかった。もうちょっと落ちついて、攻撃に行く時は人数をかけ、そうじゃない時はボールを回しながら時間を使って攻める工夫も大事かなと思いましたね」と、中盤に変化をつけられなかったことを悔いた。結局、クウェート戦から3カ月、課題は修正されていなかったのだ。
コミュニケーションが取れている、仲良しチームなのだが……。
攻撃が滞ったのは、チーム全体の意志統一が十分ではなかったのもある。
例えば先制点を奪った後、前線の選手は早く2点目を、最終ラインは1点取れたのでリスクを負わず慎重にプレーしようという、相反する意識が読み取れたこともそのひとつだ。
先制ゴールを奪う前までは高い位置にいた両サイドバックが、ゴール後には5~6mも後に下がり、前線との距離が離れていった。コミュニケーションが良く取れているはずのチームなのに、大事なところで意志疎通が今ひとつ図れていないのだ。
だが、すべてが落胆するような内容というわけでもない。
クウェート戦からの成長もいくつか垣間見えた。これまでの日本なら後半、マレーシアに流れがいったところで、失点していただろう。だが、今回はマレーシアに行きかけた流れを堅守で乗り切り、無失点で押さえることができた。関塚監督も「選手が集中して、失点ゼロに終われたことは収穫」と言っていたように、流れが悪い時には悪いなりに耐えられる力がついてきた。
また、A代表で活躍した清武は、チームに大きな影響を与えていることがよく分かった。
身近な存在がA代表でもやれることを証明したので、自分たちも頑張れば上のレベルに行ける、最終予選を戦ってロンドン五輪の出場権を獲得して、ザッケローニ監督や世界にアピ-ルしていきたい……。各自に芽生えた高い向上心と闘争心がいい緊張感を生んでいたのだ。