リーガ・エスパニョーラの愉楽BACK NUMBER
宿敵バルサに敗れたが手応え十分!
モウリーニョ・レアル、2年目の進化。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byMutsu Kawamori
posted2011/08/25 10:30
スーパーカップに臨む前から「自分たちはスーパーカップのために準備してきたのではない。シーズンのためだ」と宣言してきたことを思えば、1敗1引き分けでの敗退はモウリーニョにとっては完全に想定内だったといえよう
各選手の高度な連動性こそがレアル最大の収穫である。
では、このスーパーカップにおいてモウリーニョが最も重要視したのは何だったのだろうか。それは戦い方でもスコアでもなく、各選手の連動性ではないだろうか。
2試合を通じて、レアルは前線から最終ラインまでの距離を短く保つ時間が長かった。それによってバルサの選手たちを自由にする時間も短く、バルセロナの選手たちはDFを背負った状態でボールコントロールをする機会が多くなった。
DFの寄せがほんの半歩遅れただけでボールを受けた選手が前を向けるか否かが分かれるレベルにあって、レアルがバルサにそれを容易に許さなかったことは、それだけレアルの選手たちがバルサの選手たちと近い距離にいて、なおかつその選手にボールが展開することを早く察知していたことを意味している。
自陣に引きこもればこのような状況を作り出すことはより容易になるが、2試合を通じてレアルはピッチ中央やバルサ陣内でこのような状況を作り出す時間が長かった。それを可能にした選手たちの連動性こそが、2試合で計5失点を喫しても、モウリーニョに「チームのプレーは最高だった」と言わせた要因ではないだろうか。
「私の2シーズン目は常に最高の結果が出ている」
「私の2シーズン目は常に最高の結果が出ている」とモウリーニョも彼の側近も口を揃える。
インテルでの3冠もイタリアでの2年目だった。モウリーニョは、徹底的なスペースカバーからのボール奪取を起点として果敢に前線へ飛び出していく戦術に適応した選手を、ズラリと揃えていた。レギュラー争いが活性化し、チームに熟成と勢いの両方を兼ね備えさせるのが、モウリーニョの2シーズン目なのかもしれない。
他リーグならば、これだけの要素が揃えば確実に王座に就くことができた。では、現在のリーガではどうだろうか。
今シーズンのリーガ勢力図が王者バルサとレアルの2強になることは固い。レアルはバルサに勝たない限り、リーガ制覇はできないだろう。リーガだけでなく、チャンピオンズリーグ、国王杯でも両チームは優勝候補の筆頭であり、各大会で直接対決することを多くの人が求めている。
全てのタイトルを狙う上で、モウリーニョ・レアルの前に常に立ちはだかるであろうバルセロナ。シーズン開幕を前にして、モウリーニョはその宿敵に対して自らのチームの連動性がどこまで機能するのかを見極め、手ごたえを得た。