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<最強のクライマーの「山」論> ギリギリボーイズ・天野和明 「いつもギリギリです」 

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松山梢

松山梢Kozue Matsuyama

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photograph byAsami Enomoto

posted2011/08/26 06:00

<最強のクライマーの「山」論> ギリギリボーイズ・天野和明 「いつもギリギリです」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

ハイキングの爽やかさとは全く違う、強烈な達成感。

 それでも、昔の登山家が今よりずっとシビアな状況で登っていたことを考えると、やはり僕らは使用しないほうがいいという共通認識を持っています。そもそも登山は特に装備やルートを申告する義務はないので、ズルをしようと思えばいくらでもできるし、登っていないのに登頂したと申告することもできる。まして登る山やメンバー、天候の違う登山を第三者が評価するべきものでもありません。そんな特殊で過酷なクライミングをなぜ僕らがわざわざやっているか。それはやはりハイキングの爽やかさとは全く違う、強烈な達成感があるからだと思います。

 よく「頂上で感動するんですか?」と聞かれることがありますが、僕らにとって山頂は怖いだけ。山は登りよりも下りのほうが難しいし、実際に事故も多いんです。達成感を感じるのは、安全なベースキャンプに戻って登った山を見たときですね。その日の夜は気持ちが高ぶっていてなかなか眠れないのですが、早朝温かいシュラフの中で目が覚めたとき、ものすごく幸せを感じるんです。

「必要なのは、必ず生きて戻るという強い意志」

 ただしクライミングにはリスクもつきもの。ギリギリボーイズの名付け親である山田達郎も、メンバーの井上祐人とともにマッキンリーで遭難してしまいました。彼らの死はショックなことでしたが、「一度の人生、本当にやりたいことをするべきだ」という気持ちがより強くなりましたね。そのために必要なのは、必ず生きて戻るという強い意志。「死ぬ気でやる」のは、すごく危険なんです。

 昔はカッコ悪いことだと敬遠されていた登山が、ブームによって、たくさんの人に興味を持ってもらえるようになったのはすごくうれしいことです。ただ、僕らのやっていることはかなりマニアックな分野なので、限られた人にしか理解してもらえないことを残念に思う反面、一般化しないでほしい、というジレンマもありますね(笑)。

◇    ◇    ◇

  ◆愛用の山グッズ

アイゼン
「氷壁や雪の上を歩くアルパインスタイルでは、最も頼りになるこだわりのアイテム。「ペツル シャルレ」のダートは軽いうえ、三つの爪が短すぎず長すぎず、絶妙な長さで使いやすいんです。
アイスアックス
危険な状況でもしっかり氷壁に打ち込むことができる、信頼性の高い「ブラックダイヤモンド」のバイパーは、握りやすく、手にしっかりと馴染むバランスの良さが気に入っています。
ヘルメット
落石や転倒の危険性が高い登山でヘルメットは必須。「マムート」のトライキットは非常に軽く、頭にフィットするので、上を見上げることが多いクライミングでも疲れにくいんです。
 
腕時計
高度計やコンパス、気圧計が内蔵されている「スント」のベクターを10年前から使用。持って行った山すべてで登頂に成功しているため、ゲン担ぎのアイテムとしても大切にしています。
ブーツ
「スポルティバ」のスパンティークは、軽くて、フィット感が抜群、さらに保温性も高い優秀な高所登山靴なんです。ギリギリボーイズのメンバーのほとんどが愛用している名品です。
◆初心者にオススメの山
富士山
これまでに200回以上登っている、存在感、美しさ共にいちばん好きな山。1日に1万人も登山客がいる山は世界中にも例を見ないので、ぜひ「お祭り」だと思って挑戦してほしいです。
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