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バドミントン世界選手権で銅獲得!
不仲の“スエマエ”が深めた結束力。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byPress Association/AFLO
posted2011/08/31 10:30
現在、世界ランク2位の末綱聡子(右)と前田美順コンビ。日本バドミントン史上初の五輪メダルを目指す
喜びにあふれた情景を見て、ふと思った。
いいコンビになったな、と。
8月中旬に開催されていたバドミントンの世界選手権のダブルスで、銅メダルを獲得した末綱聡子、前田美順。帰国した成田空港では、協会関係者が花束を持って出迎えた。それを受け取った2人の、互いに喜ぶ姿に、そう感じたのである。
第3シードで臨んだこの大会、末綱と前田組は準々決勝でメイリアナ・ジャウハリ、グレイシア・ポリー組(インドネシア)に2-0で勝利し準決勝進出を果たす。世界選手権はオリンピックと違い、3位決定戦がない。この時点で、メダル獲得が確定した。
続く準決勝で王暁理、于洋組(中国)に敗れ、銅メダルにとどまったが、昨年まで2年連続でベスト8にとどまっていた2人にとって、壁を破る大きな勝利でもあった。
負けず嫌いがゆえに対立し、試合にも悪影響を及ぼしたふたり。
大会期間中の8月11日付けの世界ランクでは3位から2位に浮上し、いまや世界でも強豪のひと組に数えられる2人がペアを組んだのは、今から7年前のことだ。
だが今日の2人からは考えられないほど、ギクシャクした関係が長く続いた。
末綱が5つ年上の先輩後輩の関係にある2人は、それぞれに「強烈な負けず嫌い」だと認める。本音も隠さない。そのためか、バドミントンをめぐる対立で、ろくに口を利かなくなることも珍しくなかった。
それは試合にも影響した。戦っているさなかにもかかわらず、ぶつかりあうと互いにそっぽを向いてしまう場面がしばしばあったのだ。
「自分たちで試合を壊してしまっている」
協会のスタッフをそう嘆かせることもあったという。
当然、成績も上がらず、小椋久美子、潮田玲子のペアの陰に隠れた存在でしかなかった。
合致したふたりの目標がもたらした北京五輪の大金星。
ようやく「もっといい成績をあげたい」と話し合うようになった2人は、少しずつ結果を残すようになると、2008年の北京五輪代表入りを果たす。ところが、オリンピックの3カ月前の国際大会では、元の関係に戻ってしまい、あっけなく敗れる。試合後、情けなくなるほど後悔の念に包まれた2人は、もう一度、互いに話し合った。
こうして迎えた北京五輪で、金星をあげる。準々決勝で、世界ランク1位の中国ペアを破ったのである。試合中、目も合わさなくなることもあった2人は、劣勢に立っても互いに励ましあい、逆転で勝利をつかんだ。
その後の準決勝、3位決定戦で敗れたため、メダルには手が届かなかったが、日本勢で五輪初のベスト4入りとなる躍進を遂げた。