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“新生”巨人軍の逆襲が始まった!
原監督の非情なる「実力至上主義」。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2011/08/22 12:15
8月20日のヤクルト戦で、監督として通算600勝を挙げた原辰徳監督。首位と13ゲーム差からの逆転優勝を遂げた「メークレジェンド」(2008年)の再現はあるのか?
セ・リーグの風向きが、変わりつつある。
8月22日現在、首位・ヤクルトと2位・巨人のゲーム差は5。2位の巨人から5位の広島までは1.5。横浜を除く5球団すべてに優勝のチャンスがある、と言っていいだろう。
ゲーム差だけを見れば肉薄し、混戦模様であることは分かる。だが、8月の勝敗に目を向けると、1チームだけ他を圧倒していることに気づく。
その1チームとは巨人だ。
ヤクルトは6勝10敗2分と借金を作り、中日(9勝6敗2分)、阪神(8勝8敗1分)、広島(9勝8敗1分)にしても勝率5割を維持するのがやっと。そんななか巨人は、8月に入り7連勝を含む12勝(6敗)と、着実に調子を上げてきている。
強い巨人に戻った。
そうではない。このチームは後半戦、新たな強さを手にしたのだ。
ラミレスも小笠原も阿部も、容赦なく控えに回す。
前半戦は、それが全ての原因ではないとはいえ、「飛ばないボール」と呼ばれる統一球が、巨人の歯車を大きく狂わせた。
“お家芸”である本塁打を中心とした巨人の破壊力が激減。沈黙し続ける打線に流されるように、投手陣も安定せず開幕ダッシュに失敗した。その後も不安定なゲームが続き、7月7日には2006年以来となる借金10。13日には自力優勝が消滅するなど早くも窮地に追い込まれた。
その巨人が後半戦に入り息を吹き返すことができたのは、荒療治とも受け取れる原辰徳監督の采配が徹底して厳しくなったこと。そして、泥臭くとも目の前の勝利を逃さない執着心を前面に出しているからだ。
とりわけ、厳しさは顕著に現れている。
これまでの原監督であれば、自身が信頼する選手をスタメンから外すことはない。昨年でいえば、3番・小笠原道大、4番・ラミレス、5番・阿部慎之助は不動だった。
しかし、今年は違う。8月20日のヤクルト戦で、負傷以外では10年ぶりのスタメン落ちを経験したラミレスが象徴するように、小笠原も阿部も、自らが望む結果を残せなければ、容赦なく控えに回す。